代替燃料費を少なくするために

原発停止による代替燃料費については国家戦略局需給検証委員会の資料があり、それによれば平成23年度の代替燃料費はLNG1.2兆円、石油1.2兆円、石炭0.1兆円の合計2.5兆円であった。
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120507/shiryo3.pdf
平成24年度全原発が停止した場合、価格が23年度並であった場合には合計3.1兆円と見込まれる。もちろん価格が上昇すればもっと増える。
ここで算出されているコストはLNGが10円/kWh、石油が16円/kWhである。よくいわれているLNG火力のコスト7円、燃料費4円というのは平成10年等の資料に基づいているようだ。平成10年は為替が130円であったにもかかわらず、LNG価格は2万円弱。現在は為替が80円であるにもかかわらずLNG価格は7万円にもなっている。実質6倍に近いのが為替のおかげで3.5倍におさまっているのだ。
電力会社はとにかく石油火力のコストをなんとかしたいだろう。最新のLNGコンバインドサイクルの熱効率は61%にもなる。現在熱効率37%の石油火力から置き換えればコストは16円が7円まで下がる。しかし原発が稼動すれば置き換えた発電所稼働率は下がり、投資は回収できない。今のままだととにかく金がかかることをわかってもらって早く原発再稼動を認めてもらいたい、そんな風に電力会社は考えているだろう。
 しかし再稼動が順調にいくとは限らない。大飯だけは動いても次の原発が動く見通しはいまのところたたない。規制庁発足で国会が紛糾するだろうし、選挙でもしてもし維新の会が勝ったりしたら再稼動は当分ないと考えていいかも知れない。そうした場合毎年3兆円の出費が続き、電気代は2割以上値上がりし、民間は自衛のためコージェネ再生可能エネルギーなどを次々導入し、ますます原発再稼動の説得力がなくなっていき、そして再稼動しいないまま40年の寿命を迎えて次々廃炉。こんなシナリオだってなくはないのだ。
 逆に電力会社自ら今後10年は再稼動せずに安全対策をやりますと言ってしまったらどうだろう。10年再稼動がないとなれば最新のLNGコンバインドサイクルを導入しても10年間の高稼働が維持できるから投資は回収できる。10年で31兆円かかるところが19兆円でおさまる。電気代値上げは1割で収まる。LNGの契約も10年あれば別な方策も考えられるだろう。現在LNG価格は原油にリンクしているが、原油はすでにピークを超えたと見られているので価格は今後とも上昇するとみられるが、LNGはシェールガスの登場などにより価格はさがると見込まれる。原油にリンクしたままでは大損である。その間ポーズではなくまじめに安全対策と廃棄物処理問題を片づける。そして寿命60年の認可を受けて再稼動させるのだ。
 現在再稼動の焦点は大飯原発に集まっていて反発が強いが、これがもし女川だったらどうだろう。あれだけの震災と津波を受けて大丈夫だった原発なら多くの人が再稼動に同意するのではなかろうか。原発に必要なのは信頼なのだ。それさえあれば再稼動や寿命60年も可能に違いない。あるいはより安全な原発の新設もできるかもしれない。もし本当に石油ピークがあって供給が激減し、新興国とのエネルギー争奪戦が始まるようだと、とにかく何らかのエネルギー源をもつことは有利になる。今の3兆円のために信頼を落とすより20年後の何十兆円のための信頼回復を優先したほうが絶対得策なのに。