「少子化対策が日本をダメにする」

 なにいってんだ、少子化が進むことによる問題が顕在化してきている今、少子化対策は必須じゃないか、どこの馬鹿がアホな論をだしているんだろうと思い読んでみた。結構納得で面白かった。
 日本をダメにするといっている少子化対策は量的なものだ。とにかく子供の数を増やそうという対策だ。この人の危機感は日本の子供の質的低下にある。少子化が進んだ結果、教育現場から競争が失われた。今やどこの学校も定員割れしている状態で、子供たちは進学のために勉強する必要がない。しかもゆとり教育だし。その結果使えない若者ばかりが増え、若者が高齢者を養うどころか逆に高齢者が若者を養う事態になっている。ここに少子化対策として子供手当てなんぞ投入しても子供を甘やかすことや親の娯楽に使われ、子供の質が上がらない。そうではなく少数でよいから世界で仕事のできる優秀な人材を育てていくべきで、金はそういう方向で使うべきだといっているのだ。なるほど、確かにその通り。
 後半は少子高齢化に対応するには子供の数をふやすより高齢者の活用を考えるべきと言っている。高齢者を養うのは高齢者自身でというわけだ。どっちにしろそうならざるを得ない気がするが。著者の本業は高齢者専門の精神科医だ。生涯現役の人ほど病気が少なく、長寿であるようである。死ぬまで働けといっているのではなく、そのほうが元気で健康で長生きできるからといっている。そして高齢者が元気で健康であれば、仕事もできるし消費もできる。まだまだ高齢者向けの魅力ある商品やサービスは少ない。世界もいずれ高齢化するのだから、日本で成功した高齢者向けサービス等は世界にも通用するだろう。少子高齢化は決して暗い未来ではないのだ。
 著者は少子高齢化にともなう財政問題の解決として相続税100%を提案している。その金額は消費税20%に相当するので消費税を上げなくてすむ。若年層への負担を減らすことができる。現在平均寿命が約80だから相続する子供は60くらい。子育てなど金のかかる世代ではないのだ。結局死蔵され、その子が60になるころ相続される。それより国庫に納付させそれこそ教育費などに使ってもらった方が国のためにも自分たちのためにもなる。確かにその通りだ!
 まあ、実現可能性はほとんどないだろうが、ブロガー的のりというか、アイデアだけはいい、面白い本だった。

少子化対策が日本をダメにする

少子化対策が日本をダメにする