「世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編」

 

世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編 (NextPublishing)

世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編 (NextPublishing)

 

 なぜ世界では再エネが大流行なのか。特に欧州の場合、それには確固たる理由がある。

第一に外部コストが安いこと。外部コストとはコスト計算にはいらないコストのこと。石炭火力で発電するとPM2.5等の排気ガスで健康を害する人がでるとか、CO2を排出して気候変動を促進してその対応にお金がかかるが、そのコストは石炭火力の発電コストには入っていないから外部コスト。石炭火力の電力は安いがそのかわり別のところで誰かがコスト負担をすることになるのだ。その外部コストが一般に再エネは安い、火力は高い。ところが、EUの報告書によると太陽光の外部コストは原子力よりはるかに大きく、3倍程度もあり、天然ガス火力の3/4程度。天然ガス火力よりは低いもののあまりレベルとしては変わらない。ただし、これは2003年のデータなので今は変化していると思われるが、果たして逆転はあるかどうか。アメリカの2007年の報告書では太陽光は天然ガスの1/20程度、原子力の30倍程度。数値はだいぶ違うが順序は同じ。なお、水力・風力はどちらのレポートでも小さい。だから外部コストの観点からは水力・風力の次には原発、そして次に太陽光を推進すべきとなる。

第二に便益があること。再エネを導入すればCO2削減、エネルギー自給率向上、化石燃料輸入額の減少、設置等に伴う経済波及効果、雇用創出効果がある。この本にはこの項目での原子力の言及は無いようだが、再処理や海水ウランにも同様な効果があるだろう。再処理に関しては原子力委員会は「経済性の観点だけでなく、エネルギー安全保障、エネルギー資源の有効利用、環境適合性及び安全確保など、経済的に見積もり難い要素などを考慮して総合的な観点から政策を選択することが重要です。」と言っているのだから再エネにも海水ウランにもこの方針を適用すべきだろう。

再エネを活用しようという場合、上記の外部コストを適切に補正することが必要であり、その手段として炭素税やFITがある。また、送電等で既存火力に有利な扱いをしないよう、適切な規制を加えることが必要だ。また、太陽光の外部コストが高いように、再エネもいろいろ問題があるので是正する方法を考えていかねばならない。

そんなことが説得力あるデータと説明で書かれていて読んでいて非常に楽しい本だった。