「あの頃、君を追いかけた」(台湾映画・字幕付き)

あの頃、君を追いかけた[DVD]

台湾映画の字幕付きを見たくて近くの蔦屋に行ったが無かった。amazonプライムでも無い。NETFLIXで台湾映画の字幕付きを配信していることを発見。30日間無料お試しができるので、普段映画をみることなんかほとんどないからこの映画だけ見れればいいので無料お試しだけで十分なので申し込んで見てみた。

原作を読んでから映画をも一回見てみたら、原作にないエピソードばっかりでびっくり。映画で印象的なシーンはほとんど原作にはないと言ってもいいくらい。DVDのカバー写真の海のシーンも原作には無い。映画は短い時間で物語を作りやすいようなシーンを映画のために作ったのだろう。その分映画はいろいろあって非常に面白いものになっている。原作は現実的でそんなに純愛でも無いが、映画は彼の方は少なくとも純愛。彼女の方もたぶん現実よりも彼のことが好きであったように描かれている。だから映画を見るとどうしてくっつかないのか、非常にもどかしく、そのもどかしさがまたいい。そしてあのときもう少し大人であったなら、というパラレルワールドが具体的。後悔というテーマが浮き立っている。

小説はもっと現実的。別れたあとに彼はさっさと別の彼女を作っちゃってるし、なのに連絡は頻繁にとりあっていて映画のように2年も音信不通ということも無い。彼女も映画に描かれているほど彼を好きなわけではなかっただろう(これはあくまで推測。実際はどうかわからない)。映画でもでてくるが、彼女は彼と付き合っている状態のことを「うらやましい」と表現している。妬ましいではないし後悔のニュアンスも感じられない。彼でなくていいからそういう状態がほしいという表現だ。

彼が彼女に求めるものはなんだったのだろうか。相思相愛か、結婚か、相互理解か、肉体か。結婚や肉体であればあのとき答えを求めていれば得られたかも知れない。しかし、後で彼が最大の評価を与えるものに対し彼女がゼロ評価で別れることになるわけだから二人には重大な価値観の相違がある。例え結婚してもうまくいかないか、非常に我慢を強いられるものになる可能性は高い。結婚していればたぶん今のような進路選択は不可能で成功はしなかっただろう。だから自分と彼女との明らかな価値観の相違が確認された段階で過去にとらわれずに新しい選択をするのは妥当な判断だ。普通の人は過去の努力を無にしないために彼女の言うことを聞くだろう。後悔のもとになったとしてもあっさり決断してしまうところが彼らしい。じゃあ、いったい彼は彼女をなぜ追いかけたのか。やっぱり「好き」だったからかな。現実の選択には理屈がついても「好き」という感情に理屈はない。

終わりよければすべてよし、だ。とにかく映画は小説とはまた違って、もちろん意味のわからないyoutube版とも違ってすごく面白かった。原作者である監督はこの映画が初映画らしいが、ほんとにすばらしい。若いのにすごい才能なのでは?日本のつまんない映画はこの映画を忠実にまねすることで日本に紹介したかったのだろう。うまくいってはいないが、この作品への敬意は感じられる。この映画をメジャーな形で日本に紹介するだけでも価値はある。

ところで、日本版にはもちろんなく、youtube版にも無いシーンがいっぱいあった。男子が自慰をしたり飯島愛のAVを見たりという下ネタのシーンだ。そういう下ネタで笑いをとりに行くシーンがいっぱい。純愛ものとしてうまくいっているが一方でそんな下ネタコメディでもある。下ネタを並べる一方で彼女に対して手をつなぐシーンすらない。だけど彼女とたわむれるシーンは本当に楽しそう。現実の男子もそうだったりする。そういういろんな側面が違和感なく混然として映画を構成しているところもおもしろい。