原子力パブコメ3件

原子力関係のパブコメを募集中というので出してみた。まあ、あまり意味ないだろうが。自分の意見は反原発というわけではないが今の原子力には批判的だ。なにしろ海水ウランを無視しているわけだから。というわけで海水ウランについて書いたが結局大量の反原発コメントの中に埋もれ、伝わることは無いかも知れない。一応ここに記録しておこう。

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経済産業省資源エネルギー庁原子力政策課:今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)

提出意見:

運転期間の延長について
・震災後、原則40年、60年まで延長可、という基準はわかりやすく、その後の選挙でも追認されてきたと言っていいのではないか。よって原則としてはこのまま維持するのが適当である。
・停止期間分の延長については賛成である。安全に疑義がある場合に停止、点検や補修をするのは安全上重要である。しかし停止期間の延長が認められなければこうしたことを行うことは収入の減少を意味する。安全に資することをやるとペナルティが課されるシステムになってしまう。停止期間分の延長を認めることは安全に疑義がある場合に停止させたとしてもその分後日の収入確保が認められることになる。停止分の延長を認めることは安全性向上に資すると考える。

次世代炉・バックエンド・サプライチェーンについて
・日本の原子力はPWRとBWRに分かれ、メーカーも多く、標準化がされていない。ロシア、中国、韓国、カナダ、フランス、スエーデン、インドなどでは各国の標準炉が開発され他国に売込みがなされている。国内の技術リソースもサプライチェーンも震災の影響で縮小しておりリソースの分散は好ましくない。日本も標準化をしてリソースを集中すべきと考える。そのために必要なのは国家のリーダーシップであるが、関係者のコミュニケーションの改善がまず必要である。国民とのコミュニケーションより重視すべきである。関係者の方向性の認識が一致すればリソースの集中もサプライチェーンの構築もスムーズにいく。逆にそれがなければいかに国民の理解が進んでも原子力は衰退することになる。
・再処理については見直すべきである。理由としては第一に高速増殖炉の見込みがたっていないことがある。高速増殖炉がなければプルサーマルだけでは国産エネルギーとは言えず、コストも高く、メリットがほぼ無い。第二に再処理工場が稼働しないこと。これは技術力が不十分であることを示している。第三に海水ウラン技術の進展である。海水からウランを抽出する技術については日本で大きな進展があったが、なぜか2000年代に予算削減され、今では中国が先端を走っている。中国は海水ウラン抽出のパイロットプラントの計画を公表している。海水ウランが可能であれば原子力は純国産エネルギーであり、資源量は無限に近く持続可能なエネルギーとなる。高速増殖炉より実用的なのではないか。このような状況でなぜ全量再処理路線を見直さないのか、納得できる理由が示されない。

まとめ
現状、ウラン燃料は純輸入である。高速増殖炉か海水ウランが実用化しない限り、エネルギー安全保障上は弱いままだ。脱炭素で原子力が世界で増大した時に日本がウラン資源を確保できる保証があるだろうか。さらにウクライナで明らかになった戦争により攻撃や禁輸を受けるリスクも増大している。将来にわたる見通しが暗ければ原子力に対する投資は手控えられサプライチェーンは弱まる一方だろう。事故を経験した国民の理解も進みづらいだろう。
明らかなメリットを示す持続可能な将来像をわかりやすく示すことができない限り、原子力の拡大は難しいのではないか。しかしそれは示せる。海水ウランを使った原子力なら純国産エネルギーかつ持続可能だからだ。また、海水ウランを燃料化するエネルギーを再エネで行えば、それは再エネをウランに蓄エネすることに相当する。つまり海水ウランを使った原子力は国民の人気の高い再エネとの整合性が良い。それは原子力の人気回復に寄与するだろう。日本の原子力は全量再処理方針と心中するか、海水ウランで新時代を作るかの分かれ道にいる。今回の原子力の方針見直しを機会に海水ウランの実用化を真面目に考えるべきである。

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内閣官房 GX実行推進室等:GX実現に向けた基本方針

提出意見:
再生可能エネルギーの主力電源化」「原子力の活用」「水素・アンモニアの導入促進」について
 脱炭素を目標とする以上、再エネ主力で原子力がそれを補強する形が望ましい。さらに微調整や電化が難しいものに対応する用途で水素・アンモニアを活用するのは順番として適切と思う。
 しかし、再エネは出力変動が大きく、短期の出力変動はバッテリーや揚水、中期的には水素化・アンモニアが担うとしても、長期の出力変動に対応するのは容易ではない。一次エネルギーの主力が再エネとなった場合には問題となるのではないか。
 また、原子力も短期的には再稼働、中期的には寿命延長で対応できるものの、長期的にはウランは純輸入であり再処理・高速増殖炉は実現しておらず、持続可能性については疑問である。持続可能とするには新設・リプレースが不可欠であるが、フロントエンド・バックエンドが持続可能でなければ新設も理解が得られない。
 水素・アンモニアは長期保存可能な再エネの蓄エネルギー手段であるが変換の効率がよくなく、長期大量保存も体積が必要で限界がある。
 これらの問題を解決する手段として海水ウランの活用を提案する。
 海水ウランとは海水に微量に溶け込んでいるウランを抽出し、原子力燃料化する技術である。海水をくみ上げる方法ではエネルギーの持ち出しになるとして一旦はあきらめられた手法であるが、日本の研究所が捕集材を海水に係留する方法を開発し、それによりエネルギー収支比は12~27、価格は3万円/kg程度になることが期待されている。
(エネルギー収支比の文献:https://inis.iaea.org/search/search.aspx?orig_q=RN:45079030
(価格の文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/taesj2002/5/4/5_4_358/_pdf
日本では2000年代以降なぜか研究は停滞し、その後中国が積極的に開発を行っており、海水ウランの抽出施設を建設する計画も公表している。
(中国の海水ウラン施設の報道:https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1260462_4115.html
 日本で海水ウランを活用することのメリットは以下が考えられる。
・純国産エネルギーであること
 原子力は3年程度燃料在庫を持てることから準国産エネルギーとされているが、ウクライナの状況をみてもわかる通り、国際情勢によって3年以上戦争や禁輸が続くことはあり得ることである。また、脱炭素によって世界で原子力が増えた場合に燃料調達で問題が起こらない保証はない。海水ウランは海水が原料であるので日本近海で調達することには問題が無い。
・持続可能であること
 海水ウランは微量ではあるが海水に一様に含まれているのでそれを採ったことですぐに減ることは無い。一説には6000年分あると言われている。また、一説には採った分は海底から溶け出すと言われており、そうなるといくらとっても減ることはなく、数万年分の採取が可能と言われている。つまり資源量に限界がなく持続可能である。
・安定であること
 ウランは安定な鉱物であり保管は容易であり大量にため込める。バッテリーのように放電したり水素のように漏れ出したりすることは無い。つまり長期の蓄エネルギー手段となりうる。
・エネルギー密度が高いこと
 バッテリーでも水素でもアンモニアでも1L貯めてもそこから1kWh程度しか得られない。海水ウランであれば1L貯めるとそれで約100万kWh近くの発電が可能となる。長期保管に必要な施設は水素やアンモニアに比べ圧倒的に小さくできる。
再生可能エネルギーの蓄エネ手段となりうる
 海水ウランも抽出、濃縮、燃料化にはエネルギーが必要である。それを再生可能エネルギーの余剰エネルギーで賄えばそれは再生可能エネルギーを海水ウランに貯めておくことに相当する。つまり再生可能エネルギーの長期保管が可能になる。そうして作った海水ウランで発電することで電力の制御性を高めることができ、需給調整に寄与する。
 以上から、海水ウランを活用することで再生可能エネルギーの長期蓄エネルギーの問題を解決でき、原子力発電の燃料の不確実性を解決できる。
 原子力のバックエンド問題には直接は関係しないが、再処理・高速増殖炉は基本的には原子力を純国産にするための手段であり、海水ウランが活用できることが証明されれば行う必要がなくなる。再処理をしなければ廃棄物処分に必要な容積が増えるが、もともと原子力は燃料容積は少ないこと、および、廃棄物処分の抱える問題はその容積よりは立地であることを考えれば大きな問題ではないと思われる。世界で最終処分が進んでいるフィンランドでも廃棄物を直接処分する方法をとっている。
 脱炭素をするにあたって原子力をどこまで活用できるかは大きな影響がある。その意味で今のタイミングで原子力活用の方針を掲げたことは適切と思う。しかしながら、原子力は仮に事故が無かったとしてもフロントエンド・バックエンドで問題を抱えたままであり、それを残したままでは持続可能性はないと考える。本気で原子力を脱炭素に活用しようと思うならフロントエンド・バックエンドの問題に踏み込み、その領域でも持続可能なことを国民に示す必要がある。そしてその手段として海水ウランという日本発の技術がある。海水ウランという技術を活用することが原子力の最大限の活用につながり、それが脱炭素の実現性を高めることにつながると考える。
是非ともこの機会に海水ウランの活用を国家レベルに引き上げ開発を促進することをお願いしたいと思います。

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内閣府 原子力委員会原子力利用に関する基本的考え方(案) 

1. はじめに

御意見及び理由:

原子力利用が前提の文章となっており、「なぜ原子力を使うのか」という根本的なことがなんら書かれていない。脱炭素についてもエネルギー安全保障についても再エネが主力であることは政府方針でもまた世界の認識からも明らかである。そして原子力を利用しない国も多く存在する中、原発事故を起こし反原発感情が強い日本で今後も原子力を使い続ける意義は何なのか。それをわかりやすく納得できる表現で宣言し国民の同意を得ることをしなければ今後もずっと原子力は反発を受け続け、政治的にも経済的にも存続は難しくなるだろう。
原子力を使い続けるなら原発の新設・リプレースが必要であり、それには原子力利用の意義がはっきりしていなければならない。もちろん技術的に再エネだけでは難しいという側面はあるだろうが、それは原子力無くして解決の方法が無いわけではない。
原子力は脱炭素の最強手段でありあれば便利であることは言うまでもない。しかし原子力利用の理由について国民合意が得られなければそれは原子力と言いう手段の安定性・確実性・将来性を損なうことになる。それは原子力への投資の減少・衰退につながる。
・震災後の変化について多くの記述があるが、日本の原子力の歴史を見れば「自主・民主・公開」の原則を打ち立て法律にも明記されながらそれを無視した歴史となっている。福島事故も原発を自主開発でなくアメリカの原発をそのまま作ったため津波より竜巻対策になっていたために起きたことである。震災や福島事故はそういう日本の原子力の問題点をあぶりだしただけであり、問題の本質は宣言したことをやらないという日本の原子力の体質にある。その最たるものが原子力委員会ではないのか。「原子力の基本的考え方」としながら文章は長く「基本的」とはとても思えないし「自主・民主・公開」への言及もないし原子力利用の如何・再処理の如何について検討もしていない。現状追認・お墨付きを与えるだけの文章である。いろいろ説明している文章が「自主・民主・公開」のように今後の運用で無視されない保証はどこにあるのか。もし原子力委員会が実質を伴うものであるなら、また、「基本的な考え方」が実質を伴うものであるなら、そういう「基本的な考え方」に反するあるいはそれを無視するような行動に対し、どのように監視し修正するのか、原子力委員会の具体的行動指針等を示すべきではないだろうか。

 

3.2 エネルギー安定供給やCNに資する安全な原子力エネルギー利用を目指す

(5)核燃料サイクルの取組

御意見及び理由:

核燃料サイクルの記述が多いが、「基本的考え方」を示すならそもそも核燃料サイクルを何のためにやるのかについて説明が不可欠であろう。だがその方針を前提とした記述しかない。これでは国民の納得は得られないし、全く記述がないわけだから国民の納得は不要と考えていると見られてもおかしくない。今の原子力委員会は民主的でもなく公開の原則も無いということだろうと思う。
・本来は核燃料サイクルプルサーマルでなく高速増殖炉があって完結するものである。しかし現実に高速増殖炉の開発は進んでいない。つまり核燃料サイクルがあっても国産エネルギーを自給はできない。「エネルギー安定供給に資する」と言いながら核燃料の確保に関する記述が無い。脱炭素の流れから世界で原子力発電が活発化する可能性があり、その場合にはウランの供給が不安定化する恐れもあるだろう。
・日本では「海水ウラン」の抽出に成功している。海水ウランとは海水に微量に溶け込んでいるウランを抽出し、原子力燃料化する技術である。日本の研究所が捕集材を海水に係留する方法を開発し、それによるエネルギー収支比は12~27、価格は3万円/kg程度になることが期待されている。
(エネルギー収支比の文献:https://inis.iaea.org/search/search.aspx?orig_q=RN:45079030
(価格の文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/taesj2002/5/4/5_4_358/_pdf
海水ウランが可能になれば原子力は純国産エネルギーであり、持続可能エネルギーであり、定義によっては再生可能エネルギーの仲間入りの可能性もあるかも知れない。また不安定な再エネで海水ウランによる燃料化を行えば変動性再エネの長期蓄エネや制御性の向上にも寄与する。これらは原子力にとって大きな新たな国民にも説明しやすいメリットだ。そのことで純国産エネルギーが得られれば核燃料サイクル高速増殖炉は不要になる。そうなれば核拡散の問題も再処理工場の問題も無くなる。
こういう大きな可能性をもつ技術について原子力委員会としていかなる態度をとるのか言及すべきであろう。このままではせっかくの日本発の技術なのに中国に先を越されるし、原子力の大きなメリットが国民に伝わらないうちに原子力自体が衰退することにもなりかねない。

3.5 原子力利用の大前提となる国民からの信頼回復を目指す

御意見及び理由

・政府や原子力事業者、関連機関がよく説明をすべきと言っているが、その前に原子力委員会自身が国民にきちっと説明すべきだろう。なぜ原子力を利用するのか、なぜ核燃料サイクルをやるのか、その根本的理由が説明されないままではいくら安全やメリットやデメリットについて説明されても全体像がつかめない。逆に、説明のもっとも基本となるべきこの「原子力利用に関する基本的考え方」がこのように何の説明もしていないようでは、いくら政府や関連機関が説明に頑張ったところで理解は得られないだろう。前提となっていることを決めるのが原子力委員会ではないのか。その原子力委員会が「原子力利用に関する基本的考え方」としてこのような文章を出すようでは日本の原子力の衰退は当然と考える。