「大空襲と原爆は本当に必要だったのか」


イギリスの哲学者による書。原著は2006年、翻訳書は2007年2月に出版されており新しい本である。東京大空襲と広島長崎の本かと思ったらそれらはほとんどなく主にイギリスによるドイツの爆撃について論じている。空爆や原爆などのひどい被害を受けた人たちはそれを行う側も戦争に勝つためぎりぎりの選択の結果だったと思いたいだろう。しかし実態はそのときの将軍の趣味のようなものだったのだ。チャーチルルーズベルトも演説では一般市民を攻撃の標的にはしないといっていた。しかし戦争に勝つために空爆が必要だと思って実行しようとする将軍に対しそれを禁止するだけの論拠はもたなかった。将軍のいうようにそれが効果的かもしれないし、何より戦争に勝つことが重要であるからである。だから結果的にはそういう趣味をもつ将軍のもとではそういう攻撃がされた。ドイツの空爆を行ったのはイギリスでありアメリカではなかった。ところが日本を空爆したのはアメリカだった。それはたまたまそういう趣味の将軍がそこにいたからなのである。この本はさまざまな考察を通して空襲や原爆は間違ったことであったと主張している。それは実際に効果的でなく非人道的であり費用対効果も劣っている。だがしかしそれでも戦争の現場でそれが効果的だと思っている将軍を説得できるほどの説得力はない。残念だが戦争とはそういうものだ。戦争をしないことが一番であり、虚偽の情報で戦争をはじめ空爆しまくるアメリカはとんでもない国である。