ウイキペディア「常温核融合」


ウイキペディアの「常温核融合」の項目を編集した。編集内容をここに記録しておこう。
「しかしながら、実施された追試の多くの場合には核融合反応や入力以上のエネルギー発生が観測できなかった事や、追試に成功したと報告された条件でも現象が再現しないことなどから、一般には電気分解反応で生じた発熱量の測定を誤ったのではないかと考えられた。また、当時の東京大学学長で原子核物理学者である有馬朗人が「もし常温核融合が真の科学的現象ならば坊主になる」と発言したとされ、一般には常温核融合はなにかの間違いという認識が定着した。」
「マスメディアの報道が沈静化した1994年になって日本では通産省エネルギー庁が常温核融合実証試験プロジェクト(NHE)をスタートさせた。約20億円が投入され1998年に終了したがその最終報告は「過剰熱現象は確認出来なかった」というものであった。ここにいたり常温核融合は一般からは忘れ去られた。」
「発表当初は過剰熱を主張するフライシュマンらより中性子のデータを示したジョーンズの報告を信頼する科学者が多かった。しかしジョーンズは後に神岡鉱山内の背景中性子がほとんどない環境で実験し、中性子が観測されなかったことから常温核融合を自ら否定する。このことも常温核融合はうそだったという一般の認識を後押しすることになる。」
「しかしながら過剰熱にこだわらない基礎研究はわずかな研究者(世界で300人といわれる)により地道に続けられておりこれまでに実験的には以下のようなことが報告されている。
・検出される中性子量は一般の核融合で予想される量より7桁ほど少ない。
γ線はほとんど検出されない。
・面心立方型および六方稠密型金属では起きるが体心立方型では起きない。
・反応生成物は主にHe(4)で、またPbまでのほとんどすべての元素が生成される(核変換)。生成された元素の同位体比率は天然のものとは異なっている。
・軽水でもNiなどとの組み合わせで現象が発生する。
・過剰熱現象の再現性は未だ最大でも20%以下であるが核変換では100%の再現性の実験系も報告されている。
・過剰熱の発生量としては電極1平方センチあたり0.1〜1W程度がもっとも多く、まれに10Wとか1000W/ccという報告もある。
・過剰熱の発生頻度と過剰熱の大きさをプロットすると両対数グラフ上ではほぼ直線になって勾配は−1から−2の間となる。
いずれも現代の物理学では説明のつかないものであり、実験と並行してこれらの結果を説明するための理論面の研究も続けられている。なお神岡鉱山中で現象が起きなかったことについては背景中性子が現象のトリガーになっているとの見方もある。しかしながらこのような基礎的な実験結果の報告であってもネイチャーなどの科学誌常温核融合に関する論文の掲載拒否を続けている。」
「2008年5月22日に大阪大学で公開実験が行われ成功した。これは上述の荒田吉明大阪大学名誉教授によるもので、レーザ、電気、熱等を使わず、酸化ジルコニウムパラジウム合金の格子状超微細金属粒子内に重水素ガスを吹き込むことだけで核融合反応が発生して、大気中の10万倍のヘリウムと30kJの熱を検出したというものである(日経産業新聞)。なお生成されたヘリウムは一度金属内に取り込まれると数百度の熱を加えないと放出されないためサンプル再生が課題となるとしている(日刊工業新聞)。 日経産業新聞および日刊工業新聞で報道されたが一般紙ではまったく報道されなかった。」
日経産業新聞』2008年5月23日
日刊工業新聞』2008年5月23日
小島英夫、「「常温核融合」を科学する―現象の実像と機構の解明」、2005年、工学社 ISBN : 4-7775-1153-7
「固体内核反応研究 No.1」、1999年、工学社 ISBN : 4-87593-229-4