「間違いだらけの原子力・再処理問題」

題名から反対派の本かと思ったらばりばりの推進派。基本的に坂本龍一の反対論(再処理場からでる放射能は1日で原発の1年分)などに対応して書かれた本のようだ。わかりやすく書いてあり、再処理のメリットはよくわかる。しかし地震や事故の可能性や対処の仕方などは1文字も書いていない。今、原発事故により、原発からの放射能が年1ミリシーベルトなんて当たり前の時代になってから考えると、確かに再処理工場から放出される放射能の量はまったくたいしたことはない。再処理のほうがワンスルーより約2倍のコストがかかることは書いてあり、それでも経済的デメリット以外にメリットがいろいろあるというのはよくわかる。しかしそれは全て設計どおりいった場合の話だ。事故や地震のときはどうするのかまったく書いていないし、ガラス固化装置のトラブルの説明もまったくない。われわれが普通に考えて不安に思うようなことがらを書かないでおいて、反対派がむやみに不安をあおっていると書くのは良識を疑う。もちろん確かに不安をいたずらにあおっている人たちがいるのは確かだ。(広瀬隆とか)しかし、安全をいたずらに主張している人たちもいるのでどっちもどっちである。聞くべきなのはいたずらにあおっている人たちではなく、中身をよく理解した専門家であっても再処理反対の人たちがいるわけであって、そういう人たちの主張にたいして、反論すべきだろう。そういった本になかなかであわないんだよな。

間違いだらけの原子力・再処理問題 (WAC BUNKO)

間違いだらけの原子力・再処理問題 (WAC BUNKO)