「なぜフランスでは子供が増えるのか」

これも中身濃厚でおもしろい本である。「パリの女は産んでいる」を書いたフランス在住でフランス人を夫にもつ日本人のエッセイストが書いたものだ。前著が話題になってその歴史的な由来などを聞かれたので調べて書いたものだそうだ。いろいろな切り口があるが、どの切り口からもなるほど子供が増えそうだと思う。まずは男女関係。日本人と違ってフランスでは異性は口説くのが礼儀だ。口説かないと異性と見ていないということになってかえって失礼になるような感覚であるらしい。そのため男女の出会いは多く、一方、同性との付き合いがほとんどないらしい。どうしても異性とのつきあいが優先してしまうそうだ。婚外子が多いと言われているが、それは正式に結婚していないというだけでカップルとして同居している割合が多いようだ。フランスには結婚ではない、連帯民事契約というシステムがあって、結婚は双方の同意がなければ解消できないが、連帯民事契約は片方が解消したいと思えば解消できるので、同居してそれを選ぶカップルが多いらしい。そうでなくてもまず同棲するのが一般的だそうである。フランスは子供や医療に関する各種手当てが豊富で、また、教育費もほとんどかからないらしいのだが、それはこの何十年かの話ではなくて大戦前からの話であるらしい。フランスはなんと19世紀から少子化が進んでいてそこに大戦があったので戦争による人口減少が非常に問題となり、大戦後産めよ増やせよ政策が大々的にとりいれられ、そっち方面の予算が国家予算の20%なんていう時代もあったようだ。子供をとりまくフランスの制度的な環境はこのころにあらかたできていて、ここ数十年はどちらかというと所得制限をつけるなど縮小の方向に進んでいるそうだ。しかしそれでも子育て環境としては日本とは違いすぎる。日本がこれから子供手当てなど導入してもフランス並みになるには何十年も必要だろう。子供手当てすら導入できてないし。また、子供にたいする考え方も違う。フランスでは子供を産んだらベビーシッターにあずけ、3歳になったら保育学校、もう少し大きくなったら寄宿学校など、ほとんど子育てをしないでもすむ生活スタイルも可能で別段非難されたりもしないのだ。一方、専業主婦というのはフランスにはほとんどおらず、専業主婦をやっていると無能呼ばわりもされてしまうらしい。そんなわけなので子育てだけやっているとお仲間は全然できないので働きに出たいと思うようになるようだ。また、専業主婦を抱える経済的余裕がある男性はほとんどいないらしい。ダブルインカムが当たり前なのだ。そういう社会なので当然子供をどうにかすると言う方法はいろいろそろっているようだ。この著者はフランスは日本よりそういう環境は30年は進んでいるが、日本もおっかけているので30年後には今のフランスのようになるだろうといっている。まあそうかもしれないけど今少子化が問題なのだとすれば30年後には手遅れである。その頃出生率が2になっても日本の人口は1/4程度にしかならないだろう。まあいいんだけどね。

なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)

なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)