「まやかしの安全の国」

原子力村からの告発という副題。著者は日本原子力研究所に長くいた研究者、つまりは原子力村内部にいたはずの人だが、安全技術が専門で、原発の安全の考え方に長く警告を鳴らし続けてきたのだが、受け入れられなかったという経歴の持ち主。なかにいただけあって原子力村や保安院の問題点について適確に厳しく指摘している。書き口はやさしく、わかりやすいが中身はしっかりしたものだ。あとがきの日付けは2011年10月でかなり新しいこともあるだろうが、福島の事故の経緯についてこれまで読んだ本のなかでもっとも確からしい推測をしていると思う。(もちろん調査委員会の中間報告は別格。)中間報告とつきあわせて読んでみたい本だ。それでも1号機の非常用復水器がフェールセーフのために停電時弁が閉じてしまうということについては書いていない。今後原子力村は解体すべきだし、信頼できる体制ができるまで原発はとめるべきだと書いている。それが普通の考え方だと思うのだがそう書いている人は意外に見かけないのでなかなかいい本であると思う。福島原発の対応を見て、原子力村の人たちの対応力のなさを嘆いている。自分の頭で考えていないと。外からみてそう見えるけど処々の事情があるためだろうとも思っていたが内部からみてもそうなのであれば状況は深刻だ。もはや日本に原発を動かす能力はないと考えるべきである。