「考証 福島原子力事故 炉心溶融 水素爆発はどう起こったか」

これはいい本だ。非常にわかりやすい。計算も大雑把で直観的に把握しやすく自分で追いかけることもできそうだ。原子力ムラによく見られるような強弁、詭弁は全く無い。根拠が明確で高い納得性がある。ちょっと高いがそれだけの価値はある。もちろん正しいかどうかはわからないし、意見についは同意できないところもあるが、98%くらいは納得できる記述。小保方さんの「あの日」みたいな読後感。意外にも自分と同じ認識も多い。例えば技術進歩を取り入れないまま無為に40年を過ごし、多様性要求を取り入れなかったのは東京電力の責任、それを見過ごしたのは規制当局の怠慢と明確に指摘している。ムラに遠慮する姿勢も全く見られず、実に自由に発想し語っている。この本において工学でなんでもわかっているみたいな認識は皆無。現象を説明するために一生懸命自分の頭で考え、既存の工学で説明できないことを説明している。いったいなぜ原子力ムラと呼ばれる人たちは工学でなんでもわかっているんだから素人は勉強しろというのだろうか。結局自分では何にもわかっていないから自らでは何も語れないのだ。工学でなんでもわかっているという主張は形を変えた安全神話なのだ。原子力関係者がみんな石川氏のようであればムラとは呼ばれず、原発も日々改善され事故も起こらず、おきたとしても適切に対処できただろう。意見の違いは根拠を持って修正され、原子力の方向性も今より適切に定まったことだろう。原子力の人材が劣化してしまった結果事故は起きたということだ。であればやはり今の段階の再稼動は危険だ。原子力の推進体制はすべてにおいて一新されるべきである。

考証 福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか

考証 福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか