「ぼくがすすめるがん治療」


近藤誠の本。近藤誠の本はこういってはなんだが読み物として面白い。世の中には医療批判の本や民間療法の本はやまのようにあるがそういうものと違うのはいちいちデータで説明しているからである。しかもデータの出典もあるから専門家ならそれを確かめることもできる。患者向けの本のようであるが実は医師向けでそれを患者に対して言っているのは患者を裁判官に見立てているからだ。それにしてもがん治療は難しい。どの方法を使っても治癒が難しく副作用は大きい。近藤誠はそれをがんもどき理論できわめてわかりやすく説明することに成功したが、で、その理論がそのままどこでも通用すればいいのだが、がんの位置、種類、進行度などで実際の対応はすべて違ってくるので実は一概に言えないのだ。とにかくこれまでは治す方向のみがんばってきたのが普通の医師。がん治療は副作用や合併症がひどいから副作用を最小にする選択をしたほうがいいのではといっているのが近藤医師。その極論ががんもどき理論でありガン検診不要論となる。ネットに胃がんを放置した人の日記みたいのがあり、その人は胃がんが発見されて3年で死んでしまったのだがバイパス手術だけでいわゆる治療は受けなかった。読んでみて最初の発見時に手術を受けていればもっと長生きできたのでは?という気ももちろんするが死の直前まで普通に文章を残しているのを見れば治療を受けなかったからこそ最後まで普通に生きれたのかもという気もする。結局がんの進行が人により違うこともあり、治療したから助かったのか、治療しなくても助かったのか、治療すれば助かったのか、治療したために死んだのか、どんなルートを通ってもわからないのだ。効果がわからないなら確実にわかっている副作用を避けるのが懸命ではないかという主張は一理あるしそのためにはガン検診を受けないことだというのも確かにそうではある。