「細胞都市」「震度6強が原発を襲った」


「細胞都市」ORAユニットを設計した山本理顕の本。家族という社会の構成単位の崩壊により家という建築構成単位も変化しなければならないと論じている。その結果たとえば個室それぞれに玄関があり、個室の奥に家単位のリビングがあるような家を提案している。自分が独身のころの発想からいえばこの構成は自然に感じられるが結婚した今ではありえない。でも高齢者ではすでにグループホームという考え方が一般化しており、その場合にはこういう家は便利だろう。独身者がグループで住む場合もこういう家があればありうるかもしれない。発想としては面白い。
震度6強が原発を襲った」柏崎原発を襲った地震の話。まとまりがなく読みものとしては面白くない。私が興味のあった、原発にたいする震度6強の影響やどうして設計想定を3倍も上回る地震で壊れなかったのかという説明はほとんどない。日本は地震からのがれることは出来ない。一方日本のエネルギー確保のために原発が必要なものであるとしたら原発地震に耐えられるようにしなければならないが、過去史上最大の地震にも耐えるように設計することはコストがかかり現実的ではない。そうであれば原発は必ず地震で壊れるリスクを負うことになる。じゃあそのリスクと原発により得られる利便とをどこでおりあいをつけるのかは人によって判断が異なる。そこが政府と電力会社と環境団体などのせめぎ合いとなる。国によっても対応がぜんぜん違う。答えはないのである。言えることは原発を使う以上は安全性を高めていくべきだということだ。そのためには今回の事例はとても参考になるはずなのだ。そういう視点の本を期待したい。