「菊と刀」


もっとも有名な日本人論である。日本の占領政策の資料とするため終戦前の1944年に依頼され1946年に出版されている。日本語訳は1948年にでている。著者は一度も日本に来たことはない。ところどころ認識違いはあるものの日本人自身だと気づかないような日本人の考え方の鋭い洞察がいろいろある。欧米人から見ると普通同じに見える中国や韓国と日本の大きな違いについても指摘している。われわれからみると同じように見えるアメリカとヨーロッパもだいぶ違うらしいということもわかる。竹やりで最後まで闘うといっていた日本人が占領にきたアメリカ人を歓迎するようになるというありえない変化を実に見事に解説している。そしてアメリカの占領政策がいかに適切なものであったかも説明している。そして、この先日本が軍事費を使わなければ遠からず経済大国となり世界の中で重要な地位を占めるようになることも予言している。驚くべき洞察力である。
 イラク戦争を始める際アメリカの論調でイラクを日本のようにするというような主張があったようだが菊と刀を読まなかったのだろうか。おなじアメリカでもあのころと比べてアメリカもずいぶんおバカになったものである。