「長大橋への挑戦」

明石海峡大橋にいたる長大橋への挑戦の歴史。この分野ではタコマ橋の落橋が有名である。この分野もやはりサイエンスではなくテクノロジーの話であり、計算などはあとからくっつけられたものであり、基本的な姿勢はやはり経験法則から作られている。エンジンのときもそうだが、橋は石が鉄になったときから素材の発展とともに進歩している感じが強い。強い鉄ができればそれだけ長い大きい橋が作れるのである。そうでない技術が風に対するものであり、タコマ橋の落橋以降、風洞実験が厳密に行われることになった。明石海峡大橋の成功はシミュレーションなどではなく、こういった細かい経験側の積み重ねによるものなのである。今の時代、何でもコンピュータで計算できるからあのような大きな橋も設計可能なんだと思っていたがそうではなかった。科学とは違い、技術の世界はなんでも計算によってもとめられるわけではないのでいい仕事をすることは大変なことである。しかしそれを見る側は今の時代なんでもコンピュータで計算できるのだから技術がよくなるのは当たり前だと思っている。この本を書いたNHKのスタッフもみんな文系らしい。技術系の人たちは日本では技術系の仕事しかせず、そうでない人に技術系の難しさや面白さを伝えることは何もしていないようである。だから技術系の世界は技術系の人たちだけで閉じてしまっている。こういう構造が原子力の問題や食品安全の問題などでヒステリックな反応をしてしまう要因になっているのではないだろうか。