「イラク崩壊」


著者は朝日新聞の特派員。生々しい現地での取材の記録などがつづられている。イラクの人々もアメリカの侵攻によるフセイン政権の打倒については期待する人も多かったようなのだ。しかし打倒後のフセイン残党狩りで多くの無関係な市民を投獄したり殺したりしたため反米感情がたかまることとなった。そして宗教指導者が米国とその協力者を攻撃せよと命令するようになってしまった。不幸なことに「その協力者」とはスンニ派にとってはシーア派だったりするので両派間の戦いがおきるようになった。そしてそれに火をつけたのがアルカイダアルカイダアメリカのイラク侵攻をイスラムへの攻撃とみなし外国から多数侵入しテロ活動を行った。それが両派の戦いに火をつけまるで内戦のようになってしまった。シーア派はもともと自重していたのだが選挙に勝ってからは合法的にスンニ派を殺すようになってしまった。こんなはずじゃなかったのにのオンパレードという感じ。誰も悪意はなかったようにも思える。ブッシュが悪いのはいうまでもないがその狙いが石油ではなかったらしいというのはこの人も現地で確認している。動機は悪くなくてもとにかく戦争に訴えるというのは多くの人にとってたいていは悪いことだ。テロとの戦いというのは同じ土俵に降りるだけの意味であり、なんら解決にはならないことをこの戦争は証明した。