「一年はなぜ年々速くなるのか」


歳をとるとともに子供のころにはあんなに長かった「1年」がどんどん短く感じられる経験は多くの人にあるだろう。それはなぜかを様々な仮説をもとに考察する本である。著者は科学ライターなので科学的な考察を展開するのだがそうすると結局仮説は仮説のままであり、結論として説得力は得られず、気の向くままに書いたエッセイと似たようになってしまう。まあそういう本だと思えばいいのだが、本の題名からは読めばなぜかがわかるということを期待させるのでやっぱり期待はずれである。仮説として取り上げられる内容は我々でも普通に想像するような理由であって目新しくはない。ちょっとおもしろかったのは時間というもののとらえ方を物理的、生物的、脳科学的に解説したところ。人間の集中力持続時間は3秒しかないらしい。それがメトロノームの目盛りが40までしかない理由だというのだ。それ以下だとまとまって聞こえない、つまり集中力が持続する範囲を越えているということなのだ。考えてみれば音楽は時間と密接な関係にある。なるほど時間というのは一般にはとらえにくいものだが音楽の世界では一番近い隣人である。そういえば私も時間を捕まえるために音楽を始めたようなものだった。時間というものを音楽を使って考察すると面白いことになるかも知れない。