自然エネルギー大国


ずいぶん前に風力発電機の大国デンマーク風力発電量はデンマーク全体の電力量の20%とかにも達すると聞いて驚いたことを覚えている。発電量が風まかせな風力発電をそれほどの規模で導入することは不可能だと思っていたからだ。きっとデンマークではきわめて先進的な配電が行われているのだろう、と思っていた。その辺のことを考えてくれたブログを見つけた(URL)。デンマークは自国の自然エネルギー量を増やすことにより周辺国のCO2を増加させたという記述になっている。同様な自然エネルギー大国スペインは自然エネルギーの変動を自国で処理しようとして出力調整可能な火力発電所を増やした結果CO2が増加しているとも。なんとも皮肉な結果だが、これなら理解できる。やはり自然エネルギーの導入限界は普通に考えれば((需要がもっとも少ない電力量)−(出力調整できない原発等の発電量))×(稼働率)≒2%程度?しかない。自然エネルギーの比率をこれより上げようと思えばなんらかの形でのエネルギー貯蔵が必要だ。それが蓄電池、水素、CO2リサイクルによるメタンやエタノールマグネシウム等々ということになる。現在の趨勢としてはナトリウム硫黄電池などによる蓄電が有力なようだ。私は発電所内での水素発生とその利用および移動体におけるメタンやメタノールの活用がいいのではと思っているがエネルギー利用効率からいえばやはり蓄電がいいのかも知れない。あとは量的問題やコストなどが実用化を決めていくことになるのだろう。

結局自然エネルギーを意味ある量使うにはエネルギーの貯蔵が必要であるということであるが、貯蔵するのに電池を使うとただでさえ発電にお金がかかるのに貯蔵にもお金がかかるのではコストがかかってしょうがない。やはり多少効率がわるくても貯蔵そのものにはたいしてお金のかからない水素やメタン等の方がまだ実現性があるような気がする。ところで貯蔵ということでもっとも問題が少ないのは熱である。要するに太陽熱温水器ということだ。もともと熱を貯蔵するシステムであるし、熱効率も60%以上あるので大変効率がよく、追加のシステムを必要としないし、経済効率もまあまあである。太陽熱温水器こそ、当面何の問題もなく導入できる今一番CO2削減に有効な手段であるように思う。エコキュートエネファームも熱をためるシステムなので電力平準の方向で使えるものではあるが、将来自然エネルギーが増えた時にはそのエネルギーの変動を吸収するように作動するようにするスマートグリッドのようなシステムが必要だろう。エコキュートエネファームはもとのエネルギーは石油系だったりするので太陽熱温水器にはかなわない。まずは太陽熱温水器の導入を最優先で進め、ついで太陽光発電等の発電系の自然エネルギースマートグリッド等の配電系、水素・電池等の貯蔵系の新技術をだんだんと増やしていくというのがいいのではなかろうか。

日本に戸建住宅が2000万戸あるとしてすべてに太陽熱温水器を設置して各戸1日0.5Lの灯油が節減できたとしてCO2は何%減ることになるのだろうか。年間の節減量は灯油365万t。CO2節減量は約850万t。日本の年間CO2排出量は13億t。節減割合は0.65%。こんなに大規模にしても大したことがない。ただし家庭からの排出は全体で1億8千万tとされるので家庭の排出の節減割合は4.7%となる。それでも25%には遠く及ばない。

自然エネルギーの導入限界が((需要がもっとも少ない電力量)−(出力調整できない原発等の発電量))×(稼働率)≒2%程度?というのは風力発電を前提にしたものだ。太陽光発電は需要が最も少ない夜には必ず発電しないのでこの式にまったくあてはまらない。電力の変動をどう抑えるかという技術的な問題はあるが、それこそナトリウム硫黄電池でも適当にばらまいて設置すればなんとかなるだろう。量的にはいくらでも導入できる。2000万戸に3kWをつけた場合には年間600億kWh発電される。これは約4300万tのCO2削減になる。これで全体の3.3%、家庭部門の24%の削減。つまり2000万戸の住宅に太陽光発電太陽熱温水器を設置してやっと家庭部門の30%減が手に届くところにくるということだ。風力と太陽光では導入できる量がまったく違うのだ。