「戦争ができなかった日本」


戦前の日本がどのように中国に侵略し、太平洋戦争に突っ込んでいったか、その外交史、経済史、政治史のようなものをわかりやすく記述している。この手の本によくある軍事史ではない。政府の権力者を見たものでなく、今自分たちが政治をみているような目線で歴史をつづっているのでわかりやすく共感しやすい。日本が開戦したのはアメリカが石油の禁輸をしたからだというのは間違っていないが、じゃあなぜアメリカが禁輸したかというそこまでの外交についてもいろいろ書いてあるのでとてもアメリカが悪いようには見えない。また、開戦の動機としてはやはり経済問題が大きいようだ。対中経済戦など他ではあまり見ないような話もあって面白かった。なおこの本では満州国は惨憺たるものだったということだが、他では満州国は道義的には問題でも結構うまくいっていたという話もあり、どうなのかなと思う。厚生省も戦時中に戦争のために作られた役所であり、今のようになるのも無理はないらしい。基礎知識としてもっておきたい本である。