「メルトダウンを防げなかった本当の理由」

日経オンラインの記事。筆者は福島プロジェクトという原発事故をボランティアで解明しようとするプロジェクトの人である。原発事故ではここ数日、事故時の3号機の緊急冷却系を運転員が止めてしまっていたというニュースが流れているが、この福島プロジェクトではそういった緊急冷却系が動いているときに海水注入をしていればメルトダウンは防げたのではないかという疑問について検証を進めているようだ。それこそ自分ももっとも知りたいところである。機能的には1号機の非常用復水器は8時間、2,3号機の隔離時冷却系は数十時間以上動くらしい。これまでのマスコミの報道では1号機の非常用復水器は停電時には自動的に弁がしまることになっていて、運転員がそれを知らなかったとか、電気がなかったので弁が開けられなかったといわれている。3号機の非常用復水器についてはここ数日運転員が動いていたのを独断でとめてしまったと報道されている。一方この福島プロジェクトの人はデータから1号機では8時間、3号機では20時間、2号機では70時間以上冷却系が動いていたと結論している。そしてこの間に海水注入していればメルトダウンは防げたと考えている。そしてその責任は東電経営陣にあると考えている。そして今回の記事では重要な証言を記載している。そのままコピペしよう。
「実は、小生、縁あって、菅直人元総理の、内閣官房参与を3月20日より勤めましたが、それ以前に、事故の翌日3月12日の夜、官邸に呼ばれ、緊迫した状況の中で翌日3月13日昼まで過ごしました。そのとき、1号炉は既にベントも海水注入も実行されていたのですが、水素爆発をした後でした。菅元総理は、2〜3号炉も1号炉を同じ経過をたどるであろうことを直感し、先手を打つことを、東電、保安院、安全委員会に何度も指示していたのですが、これらの専門家たちは、隔離時冷却系が動作しているからという理由で、ベントや海水注入に踏みきりませんでした。菅元総理は、隔離時冷却系が動いているからといっても、熱が外部に放出されるわけではないので、温度と圧力は時間をともに上昇するはずだ。早くベントと海水注入をするべきだと強く主張していました。小生も、東電、保安院、安全委員会のメンバーに、早くベントと海水注入をして冷却を進めるべきだと思ったので、隔離時冷却系が停止するまで待つ理由を東電、保安院、安全委員会のメンバーに質問しています。回答はつぎのようなものでした。できるだけ温度と圧力が十分上がってからベントした方が、放出できるエネルギーが大きい。一度しかできないので、最も効果的なタイミングで行う。そのときは、小生、熱力学の知識が不十分だったので、納得して引き下がってしまいました。翌3月13日は、3号炉は隔離時冷却系が停止し危機的状況をむかえてしまいました。」
先日読んだ桜井淳の本では「炉心海水冷却系」というものが設置されていてそれを動かせばよかったのにと書いてある。なぜか東電、保安院、安全委員会は炉心海水冷却系があったのに動かさず隔離時冷却系がとまるのを待っていたということらしい。しかし一方ではかなり早い段階で炉心溶融を推測したとの情報もある。炉心溶融を認識していて、冷却系がとまるのを待つとはどういうことなのか?一方3号機の冷却系は止めてしまったという情報もあるし。とまるのを待つのだったらとめてしまえばよかったのにとも思うし、いったい何がどうなっているのだろうか。東電の経営陣が廃炉を恐れ海水注入をためらうのはわかるが、保安院や安全委が炉心溶融を認識しながら廃炉を恐れるということはないのではないかと思うが。炉心溶融を予想しながら海水注入をためらうというのはどういう心理なのだろうか。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111215/202630/