「体制維新−大阪都」

先日大阪市長に当選した橋下徹堺屋太一の共著。前書きとちょっとの対談以外は橋下が書いている。読むのはちょっと疲れる。まずは政治家と行政職員の関係について。行政をやるのはその99%が行政職員であり、政治家は行政の長として就任するけど基本的に素人であり、できることは少ない。それを自らやろうとすると民主党のように失敗することになる。だからといってなにもしなければ選挙で選ばれた意味はない。長として関与できる1%についてどこをどのように関与すれば自らのビジョンを実現することができるか、そこを見極めるのが非常に難しいと書いている。そしてそこをうまくやればプロの行政職員はあとはやってくれるのだとも。そして、政治家がやらなければいけないのは政策ではなく、システムの変更だといっている。政策は金の使い道を決めるだけだがシステムの変更は権力間の闘争であるあるからといっている。システムの変更も含めて政策だと思っていたが、とにかく政治家に期待するのはシステムの変更だというところは大賛成である。そして大阪都構想。これは現在大阪市政令指定都市として広域行政もやっているが、そこが大阪府との二重行政となっていて無駄が多い。一方大阪市には250万の人口があるのに地元自治体が大阪市というのは大きすぎる。区があるが、市の出先機関でしかなく自治体ではない。そこで東京都にならい、大阪府大阪都とし、大阪市は東京23区のような特別自治区の集合体にして特別自治区を住民サービスを行う地元自治体とするというのが大阪都構想だ。まあ、一言で言えば大阪市を多数の区に分割するということだ。これまでの合併論議とは逆の方向であるが、住民サービスを行う自治体の適正規模、そして広域行政を行う自治体の適正規模を考えた良い案だ。そして実は広域行政の規模はさらに大きくしたほうが実は望ましく、道州制の導入が望ましいとしている。住民サービスを行う自治体は小さいほうがいいのではないかというのは今小さい自治体に住んで自分でも感じている。今でも大阪には区があるが、そこの区長は大阪市職員であり、笑っちゃうことに他の区がやらないことはやらないという横並び役人根性が徹底しているようなのだ。この本の言っていることに疑問を感じる点は特になく賛成できる論である。この論をかかげて橋下氏は大勝したので今後が楽しみである。ところで既成政党は選挙の際、現職を支持した。既成政党で行政システムを変更しようという橋下氏を応援するというところはどこもない、ということは既成政党では国家の改革も無理ということである。民主党も公約をまるで実現できない、実現しようとする気がないことが明確になってきたし、次に入れるべき政党はなんだか頼りないみんなの党か、大阪都構想を実現させたあと国のレベルに進出してくると予想される維新の会ぐらいしかないのかもしれない。

体制維新――大阪都 (文春新書)

体制維新――大阪都 (文春新書)