「世代間格差」

著者は大学教授で書いていることは難しい。読み物としては読みがたい。しかし、各国の統計データの比較などグラフが多く、書いていることは良くわからなくてもなるほどと思って読み進むことができる。日本において世代間格差が存在することは明確であり、その近辺には少子化、若年失業率、年金、医療、税制などさまざまな問題が絡み合っている。よってそれらを一言で言うのは難しいのでこういう本になる。その対策として基礎年金は高齢者限定のベーシックインカムにするとよいと述べている。今の制度では基礎年金の負担が大きい割りに年金額は少ないし、未払いだったために無年金になった人が生活保護をうけて年金額より多い補助をもらっているなどということがまかり通っている。またすでに基礎年金財源の50%は税金であり、無年金の人でも税は払っているのだからもらえないのもおかしい。一方きちっと払い込んだ人はどんなに高所得者で年金の必要がなくても払った以上は受け取れる仕組みになっており、無駄が多い。全額税によるベーシックインカム化すればこういったことがすっきり整理できる。民主党も全額税方式の基礎年金というのが公約だったのではないかと思う。実行力があるかどうかは別として理念としては理想に近づいている気はする。それにしても自民党はまったくだめだ。このような世代間格差を作ったのは自民党だし年金にも財政にも少子化にも原発事故にも責任があるはずだ。しかしそういったことについての反省がないだけでなく、民主党がやろうとしている少子化対策としての子供手当て、財政再建策としての消費税等、ことごとく反対で責任感のまったくない政党である。民主党のほうが実行力はなくても理念が理想に近いだけまだましだ。民主党自身は理想に近い理念を実行することができなくても、そういう理念を掲げた政党が勝利するというのは世の中の各方面に影響を与えることができる。ところでこの本で少子化対策としての現物給付は各国比較によれば効果があるのだが、現金給付は少子化にほとんど効果がないという結果となっている。統計のことだから他の要因が絡んでいるかもしれないが、自分の想像とは違った。結局民主党子供手当ては実現しなかったことは大いに不満だったが、より現物給付に近い方向になるようだったらまあいいのかもしれない。

世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)