「決着!恐竜絶滅論争」

子供向けを想定しているような雰囲気の本だが、わかりやすくまた、いろいろ示唆に富んだ内容で面白かった。恐竜が絶滅した原因はユカタン半島への隕石墜落であるというのは1980年ごろに物理学者が提唱した説であり、現在では定説となっている。それがどのような理由によるものかわかりやすく書いてあるとともに、一般には決着がついてないというイメージを払拭するため、最近40人もの科学者が結論として書いた論文について説明し、この30年、隕石墜落説がどのように定説になっていったか、一般にはどのように伝えられているかが書いてある。1990年ユカタン半島の隕石墜落跡が発見されて以来、この説は定説となったが、その後もメディアが隕石墜落説が論争の的になっているという報道がよくされていて一般にはまだ論争が続いているような印象になっている。そうではないんだよということなのだが、純粋な科学論争を舞台にしても定説となるのはこれだけ時間と手間がかかっている。この本ではひとことも触れていないが、原発常温核融合など、エネルギーがからむと純粋な科学論争すら難しく、金の力で結論をねじまげることが容易なこともよくわかる。

決着! 恐竜絶滅論争 (岩波科学ライブラリー)

決着! 恐竜絶滅論争 (岩波科学ライブラリー)