「メルトダウン」

地震から菅政権崩壊までを描いたドキュメント。1部が原発事故の初期対応、2部が東電の処理、3部が電力政策をめぐる戦いになっている。特に1部はおもしろい。事実は小説より奇なりというが、小説なんかよりずっと緊迫感もありリアリティもあり、純粋に手に汗握る読み物として面白い。2部以降はそこまでではないが、それでも経済小説として読んでも面白い。これがもしフィクションだったら直木賞確実。しかし残念ながらフィクションではなく現実に起こってしまったことなのである。この本は実に様々な各種報道や発表、取材その他を組み合わせ、一連の流れを読み物として面白い程度に矛盾なくまとめている傑作だ。自分が接してきた報道や認識とも食い違わないし、根拠にした報道資料等は巻末に全て記載されており元記事も確認できるようになっていてまとめ資料としても使えそう。ただの読み物ではないのだ。今でものんきに早く再稼動をなどと言っている人たちに読ませたい。ここにでてくるような震災時のさまざまな問題を解決できるすべがあるのか?それがあやふやな状態で再稼動なんかして、また同じ事故がおきたらどうするのか? 今回はラッキーと思われることも結構あった。立地が福島だと西風は多くの放射能を海に飛ばしてくれる。もし西日本で原発事故がおきたらそうは行かない。大阪も名古屋も東京も汚染されることを覚悟しなくてはならない。今回心配された4号機の核燃料プールは結果的には大丈夫だったが、次はだめかもしれない。そうなったら格納容器はないので汚染規模が違ってくる。今回の事故は最悪ではないのだ。次におきるときに最悪の事態がおきない保証はない。そうなったら日本は終わりだ。
 2部では影が薄いが、基本的に主人公は菅総理である。この本による菅総理の行動は私がこれまでの報道等から想像していたものとほぼ一致する。私は事故直後から菅政権の対応を評価していたが、その認識は間違ってないようだとこの本を読んで思った。しかし池田信夫などは同じ本を読んで、いかに菅総理が無能だったがわかると評価しているのだからわからないものだ。どちらの立場であるにせよ一度は読むべき本である。池田信夫も推薦しているし。今回は図書館で借りて読んだが保存版として一冊手元に持っておいてもいい本かも知れない。

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故