「自己啓発病」社会

 本を読んで面白い本もあるが、つまらない本もあり、興味がもてず読み通せない本もある。私は昔はいわゆる自己啓発セミナーに行って世間の常識とは違いそれは自分にはとても役立ったと思っているので題名に興味をもって読んでみたのだが、つまらなかった。
 スマイルズという人がむかーしに書いた「自助論」という本があり、日本では竹内均が訳した抄訳が有名で勝間和代とか自己啓発で有名な人が「成功」の「秘訣」が書かれていると絶賛しているらしい。それは実は違ってスマイルズが問題としているのは「成功」ではなく「立志」であり、「秘訣」ではなく「精神」を語っていると主張している。成功するかどうかは問題でなく、世の中のために何かをしようと志をたてること、その精神が重要なことであるということだ。原著も抄訳も読んでないのでわからないが、成功より立志を重要視するという価値観は現代日本には確かになくなっているかも知れない。そして経済的な希望がなくなっている今、成功より立志を重要視するという精神は日本を救うかも知れない。
 今の原発問題にあてはめれば「成功」は電力会社や原子力村にあるが、「立志」は脱原発派にある。電力会社や原子力村は「成功」にしがみつき、やらせとか安全軽視など倫理的に間違った方向へ進む一方、脱原発派は成功こそしなかったがレベルの高い議論を積み重ね今花開いたのだ。どちらに価値を置くかは人それぞれだろうが、まあいうまでもないだろう。今後の方向を議論する場合もあくまで経済的な成功を目指すか、精神的な部分に価値を置くかで大きくかわるだろう。
 今度その自助論を見つけたら読んでみたいと思う。

「自己啓発病」社会(祥伝社新書263)

「自己啓発病」社会(祥伝社新書263)