「自由報道協会が追った3.11」

 自由報道協会に属するジャーナリストらの震災についてたくさんの報告を詰め込んだ本。上杉隆無責任編集という帯がついている。自由報道協会は単に記者会見を開くための団体なので統一性はないが、びっくりするほど千差万別でもない。
 いろいろな記事があってそのなかでも面白かったのは、中澤大樹という人のいわき市が一度はゴーストタウンになったのだが、今は原発関連会社が集積して活況を呈しているという記事。あと、おしどりマコという漫才師がなぜか自由報道協会に所属し、東京電力の会見で注目され、内部被曝について様々に情報を発信している話。また、重信メイという人の海外報道事情の記事。そして最後の座談会。
 大手メディアの記者は東京電力など大企業から接待漬けにされ、悪口を書けなくなっているそうだ。しかも仲良くなって内部情報を流してもらうのが仕事だったりするのでなあなあの関係を構築する必要があったりするらしい。そうするともちろん批判記事は書けない。フリーの記者の存在の重要性を示す事実だが、大手メディアは記者クラブを作ってフリーを締め出すことでも取材先のごきげんをとっているのである。
 そう書くと希望がないようだが、記者会見は徐々に開放されているようだ。保安院はしょうもない役所だが、会見はオープンになっているようだ。今は自由報道協会の存在は知られるようになり議員の方から会見の声がかかることもあるらしい。記者クラブの件はかなり開放への道筋はできつつあるようである。
 ところで珍しくこれは購入した本。この本の印税はすべて被災地支援プロジェクトにまわされるそうなので寄付のようなものである。自由報道協会への寄付にはならないが。面白い本の著者や共感できる行動を取る人の本は応援の意味で購入すべきかと思う。単なる寄付はやるのも難しいし、手元に本が残るほうがいいし。とはいえ借りれちゃう本はなかなか購入できないが。

自由報道協会が追った3.11

自由報道協会が追った3.11