「官邸から見た原発事故の真実」

メルトダウン」でしばしば登場し、菅総理がもっとも信頼した人物と書かれた田坂広志内閣官房参与(当時)が11月ごろ?にインタビューを受けたものを本にしたもの。なぜかインタビュアが誰なのかどこにもないようだ。
 インタビューなだけにあまりまとまりのあるものでは無いが、言っていることは、今回の事故で政府等推進派は国民の信頼を失った。まず信頼を取り戻す努力をせねばならない。今後原発がいかなる方向に行くにせよ、福島の廃炉放射性廃棄物処分の問題は解決する必要がある。そのためには国民の信頼が不可欠だ。仮に国民の信頼が得られて今後原発を稼動できたとしても、いずれ放射性廃棄物の問題で原発は必ず行き詰る。だから脱原発依存は必要である。ただ、政府としてやるべきことは「いかなる状況の変化にも備える」ことである。そのためには原発を安全に運転する技術も必要だし、それには人的、組織的、制度的、文化的なものも含まれる。というようなことである。
 題名から想像する内容からはちょっとはずれていたかな。まあ主張はどれももっともなことである。知識はあるかも知れないが人間的にレベルの低いでたらめ委員長よりこの人を信頼するのももっともだ。
 菅総理のストレステストのおかげで原発はあとひとつを残してすべて止まり、日本の全原発停止が目前だ。国民の信頼を取り戻すには安易な再稼動をしないで、国会事故調の結論を待って独立委員会方式の規制組織をつくり、そこが福島を踏まえた新たな安全基準を作り、作られた安全基準を受けて各原発が安全対策をし、その検査に合格したものから稼動するというのがまっとうなやり方だ。それには何年もかかるかも知れないが、何年後かにはもしかすると石油が入手できない状況にもなるかも知れないから、そのときまでにきちんと安全確保をしておけば原発が稼動できると助かるかも知れない。そのときまでに政府が信頼を取り戻せるかが問題だ。
 根拠なき楽観的空気によって安易に再稼動すれば、やっぱり現政府はだめだということを確認することになってしまう。そうなればまずは信頼できる政府を作ることからはじめなければならない。現政府の信頼は原発再稼動までにどの程度まっとうなステップを踏むかにかかっている。

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)

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