「生活保護VSワーキングプア」

 生活保護といえばニュースになるのは断られた人が餓死したり(なぜ認定しないのか)、暴力団員など反社会性のある人物に生活保護費を出していたり(なぜそんなやつに)などである。しかし実際にはそんなわかりやすい例はまれであり、助けてあげたいけど金も無限にあるわけじゃ無し、実際よからぬ人が多いのも事実でケースワーカーはいつも悩んでいるのだが、報道などでさらにいじめられると結局多くの人はやめ、ベテランが育たない。正しいものはなく、目標も設定できず、評判は悪く、現場は先の見えない毎日を送っている。
 建前は生活保護は困った人なら誰でも受給できるはずだが、実際の運用上働ける世代は病気でもないかぎり受給できない。しかし現代では働いても働いても食っていけないワーキングプアが若者の間で激増している。そういう人たちに適切な支援を与えないでおくといずれ体をこわして生活保護せざるを得なくなる。そして最大の被害者はその子供たちである。
 著者はこういった生活保護が抱える問題について、「自立支援」であるととらえることにより評価基準、目標、希望といったものを見出そうとしている。評価基準は自立できた後の納税額によればよいと。それが費用対効果でであると。現在は働ける世代が受給するには病気にならなければならないが、病気になったあとに受給した人はほぼ一生受給者である。自立支援に舵を切れば病気になる前に支援し、それにより自立できて生涯働ければ支援の費用対効果は大きい。そして自立できる人が多ければその分より多くの人に支援できることになる。
 ドラッガーもでてきて生活保護もしドラ的でもある。様々な混濁した問題を考え方を変えることにより整理し希望を見出すというのはだれにでもできることではない。こういう人がいることがまさに社会の希望である。

生活保護VSワーキングプア (PHP新書)

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