原発停止の経済性

橋下大阪市長や、滋賀県京都府知事による再稼動条件が提示され、それを受け入れて原発が数年停止するようなことになれば代替燃料費の経済的損失が莫大であり現実的でないという指摘が多数の経済学者から出ている。しかし安全対策のための原発停止が経済的損失を発生することはその寿命まで考慮すると必ずしも自明でない。

このことを説明するためのもっとも都合の良いモデルとして以下の2点を仮定する。
仮定1.今後40年間は燃料費、為替レートが不変である。
仮定2.原発安全対策の結果、停止期間と同期間原発の寿命が延びる。

以上の仮定をもとにすでに稼動年数が20年経過した原発について、今年再稼動した場合と安全対策のため10年停止し、10年後に再稼動する場合を比較してみよう。図1は今年再稼動した場合、図2は10年後に再稼動した場合である。

図1

図2

この図を見比べると燃料費の総額は同じであり、代替燃料費を安全確認時に支払うか、寿命後に支払うかだけの違いであることがわかる。

さて、仮定1について現実にはどうであろうか。今後の中国・インドの経済成長、石油の枯渇等によりエネルギー価格は上昇が避けられないと見られている。一方円相場は日本の財政悪化、貿易収支の悪化、少子化等により長期的には安くなると見られている。

そこで円安の進行とエネルギー価格の上昇によって20年で燃料費が2倍になるとして作図してみる。図3は今年再稼動する場合、図4は10年後に再稼動する場合である。

図3

図4

この図を見比べると10年後に再稼動したほうが燃料費が少なくなる。それは10年稼動が遅れ、寿命が10年のびる場合は代替燃料費が円高、エネルギー安であるのに対し、今年稼動し通常の寿命で廃炉にする場合には円安、エネルギー高の燃料費を支払わなければならないためである。

さて次に仮定2について現実にはどうであろうか。政府は原則原発寿命は40年とする一方、審査に合格すれば例外的に60年までの寿命延長を認めるといっている。つまり徹底的な安全確保を10年かけてやれば通常より20年の寿命延長が認められる可能性がある。これを作図してみると図5のようになる。図5は10年安全対策をやった結果寿命60年を認められ、稼動期間が20年延びた場合である。

図5


図3〜図5を見比べると明らかに図5の燃料費がもっとも少ない。つまり再稼動をすぐやるかどうかより、原発の寿命をどれだけ長くすることができるかの方が経済的な影響は大きい。よって安全対策を徹底し、原発の信頼回復を図り、廃棄物処分を具体化し、寿命60年の運転を目指すことこそもっとも経済合理性にかなった行動であるといえる。そしてそれは大阪府滋賀県京都府知事の提言の方向性と一致するものである。電力会社や国は経済合理性の面からも大阪府等の提言の受け入れを真剣に検討すべきである。

・・・というのをアゴラに初投稿してみた。掲載され、BLOGOSにも転載された。どんな反応があるか楽しみだ。しかしあっという間に他の投稿によってトップページから押し出されてしまう。休み中なんかに投稿してもいつも昼休みにネットをみてるようなサラリーマンにはまったく気づいてもらえなさそうだ。まあしかし載せておけば参照もされるわけだし、意味はあるだろう。載せてくれたアゴラに感謝。
アゴラ 原発停止の経済性 http://agora-web.jp/archives/1452570.html
BLOGOS 原発停止の経済性 http://blogos.com/article/37988/