バス事故

 7人が死亡し重軽傷者多数という痛ましいバス事故が起こった。原因は運転手の居眠りということでマスコミはバス会社陸援隊による運転手過重労働と騒ぎ、国は運転手一人で運転可能な距離を短縮するなどの規制強化をしようとしている。それはそれで間違ったことではないと思うが、マスコミや国の対処が功を奏したところでこの手の事故はなくならない。運転手をいかに休ませようと、距離を短くしようと眠いときには眠いのだ。居眠りを完全に無くすことはできない。ミスは起こるものであり、ミスが起きることを前提に対策するべきなのだ。
 世間では鉄道は安全だと思われているが、実は鉄道は戦前は車以上に危険な乗り物だった。運転手の信号の見落としや居眠りによる衝突事故が多く、一旦事故がおこると100人200人の犠牲者数はざらだった。それが安全な乗り物に変貌していった理由はATSなどの運行制御装置の導入による。福知山線脱線事故はATSの設置漏れでおきたようなものだ。
 もうちょっとましな突っ込み方はないものか。そう思ってネットを検索すると真の原因は別にあることがわかった。それはガードレールが防護壁の手前までしかなかったことである。ネット情報によるとガードレールはもし車が接触しても転落したり何かにぶつかったりしないよう誘導するためにある。言ってみれば一種の自動車誘導制御装置である。よって防護壁があるならそれにぶつからないようガードレールは防護壁に重ねるような形で設置されていなければならなかった。もしそういう設置がなされていれば、ガードレールに沿ってはみ出す今回のような事故では死者はなかったはずなのだ。
 もちろん事故を起こした主因は運転手の居眠りだ。しかし7人死亡、重軽傷者多数となったのは道路管理者の責任によるものだ。NEXCO東日本によると関越道ができた30年前にはガードレールをそのような形にしなければならないという基準はなかったとのこと。つまり鉄道で言えばATSが無い頃の路線にはATSを設置する義務はないといっているようなものだ。鉄道は路線の設置時期にかかわらず全路線にATSを導入したから安全になった。高速道も設置時期にかかわらず全路線に最新の安全対策を導入すべきだ。
 NEXCO東日本に道路管理者としてのプライドがあるなら、進んで今回の事故は自らの責任であることを発表し、補償等に対応すると同時に全国の道路を再点検し、このような事故が起こる可能性のある問題をつぶしていくべきなのだ。それは道路管理者が自動車安全の一部分を制御することが可能であることを意味する。その知見を全国の一般道まで広げていけば日本の自動車環境はさらに安全になっていくだろう。
 ところでこの手の事故についてはもうひとつの切り口がある。それは自動車側の安全対策である。
トラックには居眠り防止装置というのがついているらしい。危険な蛇行運転を始めたら運転手に警告する装置である。そういう技術はすでにあるのだ。だから安全対策としては設置義務化すればいいだけだ。さらに当然ながらスバルのアイサイト。これも安全対策として全車設置義務化すべきだ。当然ドライブレコーダーも全車義務化すべきだ。。
 日本に技術はあるのに日本にはそれを使って安全を向上しようという気がないようだ。こういう事故をきっかけに安全技術の導入を真剣に進めるべきなのだ。マスコミもこういう突っ込み方をしてもらいたい。原発といい、高速道といい、自動車といい、どうして日本はこんなに安全に対し鈍感なのだろうか。