「物理屋になりたかったんだよ」

 カミオカンデノーベル賞を受賞した小柴さんの本。おもしろいことに自分は馬鹿だアホだといっているような本なのだ。もちろん雲の上の世界ではの話であるが。理論物理に早々に見切りをつけて実験物理の道を歩むのだが、実験装置を作ったりとかも小児麻痺の後遺症があったりして不得手であり、向いていたとはいえない。何を実験すると面白いかという感覚を磨いてきた人なのだ。カミオカンデができてから超新星に遭遇し、またとないデータを得たことを幸運といわれることに対し、準備してきたかどうかの差、山勘は磨けばあたるようになるものだといっている。自分は馬鹿でアホだけれども実験物理の山を当てる勘を磨いてきた結果、今日があると言っているというわけだ。
 南部陽一郎の話がよくでてくるが2002年の本でまだノーベル賞はもらっていない。朝永振一郎にもよくお世話になったようで、やはり優秀な人に縁もあり、頼る技?もあるようだ。
 別にまねができるわけでないけれど、自分が劣等であると感じている人にとって勇気付けられるような話だ。しかもそんな勇気付けを目的で書かれた文章でないだけになおさらだ。そして、自分を主張することの重要さもわかる。自分が劣等であるかとうかは別に置き、自分の自信がある、興味がある分野を自ら磨き、そして主張すること。それが結局は自分の環境も世の中も改善していくことにつながるだろう。自分を馬鹿やアホだと思っていても努力すべきなんだなと思う。