「iPadショック」

 iPadはこんなにすごい、おもしろいと言っている本。営業トークのようでもあり、ITオタクの世界のようでもあり、きっとくだらなくって最後まで読めないだろうと思ったが、まあまあおもしろく最後まで読めた。iPhoneもそうだが、PCの一種には違いないのだが他のPCと違い、使いやすさを究極まで求め誰にもまねできないまでに仕上げた芸術作品と言ってもいいような製品なのだ。
 それを言葉で説明されても単なるファンのよまいごとと思ってしまうが、データで出ているのである。2009年端末の出荷台数がブラックベリー38%、iPhone21%だったころ、広告のクリック数シェアはブラックベリー38%、iPhone59%だったというのだ。ブラックベリーは端末出荷台数に比例しているがiPhoneは比率の3倍クリック数が多いということだ。それだけ使い勝手がいい、使いやすい、使いこなしている人の人数が多いということではないだろうか。スペックではわからないまねできないよさがあるのは事実のようである。
 面白かったのはフラッシュ不採用という話。ジョブズがアドビに馬鹿にされたのをうらんでみたいな話もあるが、その最大要因はフラッシュがシステムを不安定化することにあるようだ。確かにPCを使っていてもなんだかおそかったりフリーズしたりすることがあって原因がわからないが、使い勝手を追求するアップルはCPUの負荷をフラッシュによるものとそうでないものに分け、検討した結果、フラッシュは使い勝手にかなり悪い影響を与えると判断したようだ。これほどスタンダードなものについても目指す方向に悪影響があるならばっさり切り捨てる度胸があるところもすごい。
 あと、ソフトバンクとのからみも面白い。日本の携帯メーカーは電波キャリアの下請けになって開発してきた結果ガラパゴス化したが、iPhoneはキャリアのことなんか露ほども考えず、ユーザの使い勝手だけを追求し最高のものに仕上げた。その結果全世界で同じハードを供給し、自分の要求に従わないキャリアは袖にする。力関係は逆転しキャリアを下請けに使っている感じになっている。そのためキャリアに対しアップルの要求は厳しくちょっとでも不信を招くと拒否されてしまう。ドコモはアップルの不信をまねいた結果、拒否されていると著者はみている。一方ソフトバンクはそのアップルにキャリアとして選ばれるだけでなく、アップルに対し日本の都合を主張し認めさせ、ついには他のどこの国でもやっていないiPadのSIMロック供給まで実現させた。アップルのソフトバンクに対する評価は高いようだ。
 しかし今やかなりの人が実物を使いこなしているなかでこんな実物をみればわかるようなことを書いた本を読んで感想を書いてるなんてほんとに遅れてる!しかしそれでも今のところiPhoneやiPadを買う予定はないのだ。毎月の通信費が今より上がるのは我慢ならない。だからこんな本でも読んで雰囲気だけは知っておこう。

IPADショック

IPADショック