シマウマ(f_zebra)さんと(何度でも)考える『合理的なリスク評価』

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シマウマさんという人はたぶん現実に電力の仕事をしている人なのだろう。非常に現実的な例をあげて原発再稼動を主張している人だ。電力システムを最適化しようとすればおそらくこの人のいうことは正しい。その主張から反論を試みる。

「現在の日本の原子炉に対する安全基準、そしてそれを運用している規制当局の方針は間違いなく世界一「厳しい」ものですが、アメリカやフランス、IAEAなどの規制に対する考え方の根本にある「合理性」が著しく欠落しているため、極めてバランスの悪いものになってしまっています。」
 スリーマイル島直後のNRCもこういう状況だったらしいがNEI等により改善されたとエネルギー会の資料にあった。今は福島後の影響大なので合理性より厳格さが先行するのは仕方ないかもしれない。日本版NEIのような有効で合理的な仕組みが作れるかどうかだろう。

「それでも、事業者や関連業界の努力によって、わが国の原子力発電は非合理的な規制の下でも非常に高い安全性を実現できています。少なくとも、原子炉を動かさずに火力発電に頼った綱渡りのエネルギー供給を続けている現状は、原子炉を動かすよりも遙かに危険です。」
 事業者や関連業界が高い安全性を実現しているといわれても福島事故を起こしているのだから説得力はない。事故以前と何がかわったのか。業界内の常識による判断であれば実現された安全性には疑問符がつくだろう。原子力と火力とどちらが危険かは見方によるが、火力でどんな事故がおきても福島のような避難が必要な状況にはならない。

「震災以降、日本では政府も国民も気候変動の問題については意図的に目を逸らし、真剣に考えることから逃げ続けています。合理的に考えれば、この問題を先送りすることは将来の世代に原子力利用などとは比べものにならない大きなリスクを背負わせることになるのは明らかです。」
 その通りだが気候変動の問題は地球の問題であって日本がいくら原発でCO2を減らしても解決にはならない。気候変動の問題を原子力で対策することは間違いではないがそれが地震国日本である必要はない。気候変動のリスクを低減するには地球規模の対策が必要で原子力より先にやるべきことはいくらでもある。

「繰り返しになりますが、リスクについては合理的、定量的に検討した結果はしばしば私たちの直感とは食い違います。私たちの直感は、極端に発生頻度が小さく、でも被害規模は極端に大きいというハザードを正しく「感じる」ことはできません。」
 できなかったがために福島事故は起きた。そして事故前もリスクについて合理的定量的に検討されているはずであり、十分小さな値であったはずであった。直感で感じることができないものについてはより安全側の対策をすべき事例と思える。

なお原発停止が経済に与える影響については私にはわからない。実際のところどうなのだろうか。もちろん地元経済には悪いだろうし貿易赤字も拡大するだろうし電気料金も値上がりするだろう。しかし上がった料金を払っても電気を使う価値があるなら燃料費を払うことは悪いことではないはずであり、問題は貴重な電気を使いながら円安の状況で輸出を増やせないことにある。問題は別のところにあるような気がしてならない。