海の太陽光事業趣旨

融資を受ける資料の事業趣旨を書いた。ほぼ前(去年の4月)と同じだが。

事業計画の趣旨

(1)なぜ再生可能エネルギー

 地球温暖化問題は竜巻、突風、集中豪雨、台風の強大化等でわれわれの生活にも影響を与えるようになってきた。そんな中、国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC)は温室効果ガスの排出量を2050年の時点で最大で7割削減し、今世紀末までにゼロにする必要があるとの報告書を発表した(2014年4月13 日)。2012年度の日本の電力の再生可能エネルギー比率はわずか1.6%(水力別)。電力を総エネルギーの1/4とすると全てのエネルギーを今世紀末までに再生可能エネルギーにおきかえるには2012年の約200倍以上に増やす必要がある。あと85年しかないので2012年の導入量の2倍を毎年継続的に導入していく必要がある。
 原子力温室効果ガスを排出しないが、原子力で同じことをやろうとすると、2010年の12倍、600基に増やす必要がある。毎年6基ずつ導入することが必要だが現在の状況からは困難であり、また、仮に600基建設できたとしても燃料ウランが枯渇すれば結局再生可能エネルギーに頼ることになる。再生可能エネルギーはさまざまな問題があったとしても増やさざるを得ない。
 一方再生可能エネルギーに投資していた企業や個人は2012年時点でどの程度いただろうか。それが仮に0.5%とすれば、すべての人や企業が再生可能エネルギーに投資すれば200倍の目標は達成できる。200倍の目標は意外と難しくない可能性がある。特に日本人は皆がやっていることに横並びで追従する性質がある。そして企業の数より個人の数の方が圧倒的に多いので、企業に頼らずに再生可能エネルギー設備に投資する個人が増えることは再生可能エネルギー設備の増加に大きく寄与することになる。

(2)なぜ太陽光発電

 太陽光はその再生可能エネルギーの中でも比較的高コストなエネルギーである。しかし、太陽光発電はその発電時間帯が電力需要とおおむね一致している点で優れている。人間は主に昼間活動するため昼間の電力需要が大きい。太陽光発電も昼間の発電が大きい。このことにより太陽光発電は昼間の大きくなった電力需要を供給できる効果があり、その時間の火力発電量を減少させ温暖化ガスを効率的に削減できる。また、太陽光発電の単価が高いとしても代わりに高コストな石油火力発電所を止めることになるので社会的には必ずしも損失にならない。太陽光発電が増えすぎてベースロード電源まで止めるような事態にならない限り、太陽光発電は日中の温暖化ガス排出削減に大きな効果があると考えられる。東京電力管内では平成27年10月時点での再生可能エネルギーの導入量は878万kWであり、ピーク電力約4000万kWに対してまだ十分小さく、現時点での増加は電力不安定化にはつながらない。また需要の少ない夜中には絶対に発電しないので太陽光発電の電気があまって処理に困ることはない。これは電力の不安定化要因のひとつをなくすことになり、配電設備が再生可能エネルギーに対応しきれていない初期導入時に太陽光発電を選択するのは理にかなっている。

(3)なぜ50kWの太陽光発電設備か

 太陽光発電は太陽や雲の移動により発電量が安定せず変動が大きい。メガソーラーのように1箇所に巨大な太陽光発電設備があると、その発電量の変動も巨大になる。メガソーラーは土地が必要なので田舎に作ることが多く、周囲の電力消費が少ないので、電力消費地まで移送することが必要で、その場合のメガソーラー用の電力線はその最大電力に合った送電設備を必要とするが、変動が大きいためその稼働率は10%しかない。地域の電圧に与える影響も大きい。変動を吸収する技術も高度なものが要求される。 一方、50kW程度の小規模ソーラーは電力消費地の近くに作ることができ、一般家庭20軒程度の電力なので送電設備は専用にならないし、その変動も周りの配電線で十分吸収できる。太陽光発電は小規模分散型が設備の有効利用という点でも変動の吸収という
点でも望ましいのだ。だから本来は企業や家庭の屋根に乗せて余剰電力を流通させるのがもっとも理想的だが、規模が小さすぎて再生エネルギーを増やすという点ではあまり効果的でない。50kW程度の小規模ソーラーはエネルギーを増加させる点でも電力送電配電設備の有効活用の点でも変動吸収の点でも電力消費地移送の点でもほどほどに効果的である。
 
(4)なぜパネルを多くつなぐか
 
 本計画では47.2kWのパワコンに76.32kWのパネルを接続する予定である。パネルがパワコンの容量に対して161%となっている。
 太陽光発電と電力需要はともに日中が多いが、そのパターンは正確には一致しておらず、電力需要は日中9時から18時まではそれほど変動しないが、固定式の太陽光発電量は必ず正午付近にピークとなる正弦波を描く。将来太陽光発電が非常に多くなった場合にはこの性質の違いは利用効率の悪化につながる。雲の移動による発電量変動は避けられないが、太陽の移動による発電量変動はなるべく安定化させた方が望ましい。パネルをパワコン容量より多く搭載することで太陽移動にともなう発電量変動を減少させ、発電量を安定化する効果がある。比較的安定した需要に対して太陽光発電を活用していく上では、太陽光発電所側でも発電量を一定にする努力は今後一層必要になってくると考える。そのためにパワコンより大容量のパネルを搭載し、発電量のより安定した太陽光発電所を増やしていくことが必要である。

 一方、太陽光発電所にとってはピークの発電量を少ないパワコンで制限されることにより採算悪化につながる懸念がある。これについては確かにピーク発電量は制限されるものの、曇りなど光量の少ないときの発電量が増大するため、トータルでは大きな影響は少なく、実例からはパワコンに対して160%のパネル搭載で155%の発電量が確保できると考えられる。

(5)本発電所について

 今回の太陽光発電設備設置場所は太平洋から約3kmの高台地域である。NEDOの日射量データベースでは20度架台、方位南向きの場合3.94kWh/m2となっており、日射量としては全国からみても上位の地域である。高速道路インターから近く、自宅から約2時間で移動できるため管理も容易である。