「論文捏造」

STAPでなく、超伝導の世界で起こったシェーン事件をNHKが追いかけたもの。面白いことにSTAPでできてきた登場人物はほとんどこちらでも登場する。小保方さん役はもちろんシェーン。理研はベル研、笹井さんは世界的に有名だった物理学者バトログ、早稲田大学はシェーンの出身校コンスタンツ大学。若山さん役はシェーンの大学での指導教員でベル研の研究員も兼務していたブーファー。STAPと違うのはシェーンは論文を60本も発表し、話題になってから捏造が発覚するまで何年もかかったこと。そのため追試をしようとして失敗し悩んで時間とお金を無駄に費やした人が多くいた。STAPは話題になってすぐいろんな疑義がでたのでそういう被害は少なくてすんだだろう。理研と同様ベル研も不正の調査に消極的。早稲田と同様コンスタンツ大学もシェーンの博士号授与は問題なかったと結論したが博士号は影響が大きいとして剥奪した。ネイチャーはバトログのお墨付きがあったから載せたようで、笹井さんのお墨付きを重視したSTAPと共通する。笹井さんと同様、バトログもシェーンのノートを確認したりはしておらず、お墨付きの責任を果たしていなかった。STAPの毎日新聞と同様NHKも不正、捏造に強く反応し、ネイチャーの責任などを問題視しているが、科学者コミュニティはSTAPと同様に不正、捏造の摘発には消極的だ。科学の世界でミスや何らかの不正は日常的で、結局再現しない論文は忘れされられることで正当性が保たれるとみんな思っている。科学ジャーナリストはネイチャーのような有力誌がのせるからには信頼に足るものだと思っていて、そんな論文に捏造が発覚すれば責任問題と思っているが、科学者はそうは思っていないが、まわりに押される形で誰かを悪者にして幕引きを図る。この問題は「科学への信頼」があると思っている世の中一般やジャーナリストとないと思っている科学者たちとの認識ギャップが一番の問題なのではないか。

論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)