「風船爆弾」


太平洋戦争も後半の昭和19年11月〜20年3月に陸軍は紙風船に水素をつめて爆弾を搭載して飛ばし、アメリカ本土爆撃を狙った。この本はその風船爆弾の背景、経緯、技術、効果などを調査してまとめたものである。各方面をむらなくよく調べてあり、まとめかたもよく、読んでとても面白かった。紙風船は和紙をこんにゃくのりで何層にも重ねて作った。内圧に耐えるために非常に繊細な作業で、全国の女子高校生などが動員されてつくりあげたものであった。現在の水素自動車の研究でも水素は漏れやすく扱いづらいと聞く。それを戦中の物資もないときに紙で封じ込め、-55度の気温と8000mの高度に耐えアメリカまで飛んでいくものを作ったのだからそれはそれですごいことなのだ。実際には行われなかったが細菌兵器などを搭載する計画もあったらしい。行われていれば原爆やアウシュビッツとならぶ戦争犯罪となったかもしれない。あなどるわけにはいかないのだ。