「ルポ東京電力原発危機1ヶ月」

朝日新聞の記者で原子力工学卒の人が原発事故の際東京電力の記者会見場に1ヶ月つめていたころのルポルタージュ。ほとんどは記録であって著者の私見は少なく読み物としては面白いわけではないが、それでも読みやすく書いてあり、経緯がよくわかる。誠意があり、真実を語っていると思われる課長たちに記者たちが納得いく姿とか、逆に危機感が薄く、尊大で、隠蔽体質の首脳陣に記者たちが怒り出す姿とか、記者たちが原発のことを心配していろいろアイデアを出し合う姿とか、記者会見場の雰囲気がわかってそういうところは面白い。著者が原子力工学を専攻することを決めたのは新聞記者という進路を決めたあとだったそうだ。記者になるのだったら専門を深く勉強してもしょうがないし、原子力工学はプラント技術なので幅広い分野を薄く知っておくことになり、それが記者として役に立つだろうということらしい。また、チェルノブイリのころであり当時から原子力は社会問題でもあったのだ。そういう視点で原子力工学を学ぶことはまたおもしろいことであったろう。

ルポ東京電力 原発危機1カ月 (朝日新書)

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