「風評被害」

最近風評被害という言葉を聞くたびに、風評被害とは安全であるにも関わらず売れなくなることを言うのであって、実際に放射能が降った地域の食材や旅行を回避する行動を風評被害とするのは間違いではないかと感じていた。この辺を解説してくれている本。風評被害と言う言葉の出どころはやはり原子力であったようだ。他の化学物質の汚染などの事故の場合は実際に汚染があったりするのに対し、原子力の場合、汚染がないことが明らかであっても事故が報道されると売れなくなる。この被害を言い表すため風評被害というマスコミ用語が生まれた。同じ原子力の分野なのでマスコミは安易に風評被害という言葉を使っているが、実際に放射能が撒かれているのだから、そして食材からセシウムが検出されているのだから、原発付近の食材などが売れなくなることを風評被害とは言えないのだ。ところでこの本もあとがきが面白い。著者が原発風評被害について研究しようとすると、原発関係者からは批判者と見なされ、反対派からは推進者と見なされ、どちらからも情報がなかなか得られない状況に陥ってしまったそうである。そのなかで苦労しながら研究を続けてきたそうである。こんな間接的な研究でさえそうなんだと思った。直接安全に関わるような議論などであればさらに議論は拒否されたことであろう。原発が爆発する結果になったのも無理はない。選択肢としては安全な原発を再稼働する道もあるかと思うが安全についての議論ができないようなところに任せるのならやはりやめておき脱原発する方が良い。議論を拒否されるのはこちらが素人だからではなく、あちらがプロでないからだと思った方が良い。