国富流出論の不思議

原発再稼動を求める人たちは原発を止めると代替燃料費として年間3〜4兆円の国富が海外に流出するからそれを避けるために原発を早期に再稼動すべきと主張している。

ところが代替燃料費を実際に計算してみると以下のことがわかる。原発の代替としてLNG火力を使用するとする。LNG火力のコストは7円/kWh、そのうち燃料費コストは4円/kWhと言われている。全国の原発の発電能力は4682万kW、稼働率は通常65%とすると年間発電量は2666億kWhである。これを燃料費4円/kWhのLNG火力に置き換えると1兆664億円。ほぼ1兆円である。

この計算は原発全停止の場合だが2011年度は原発が全部止まったわけではなく、2011年度の原発稼働率は23.7%であったと報道されている。つまり2011年度に原発で発電された電力量は972億kWhあったのだ。ということは火力で置き換えた電力量は1694億kWhであったということである。もし燃料費4円/kWhのLNG火力で置き換えれば6776億円ということになる。

ところが2011年度は原発を止めたために3〜4兆円の国富が流出したことになっている。つまり上記計算の約5倍以上もかかっている。間をとって3兆5千億円とすれば、原発の代替発電コストはなんと20.66円という計算になる。6776億円ですむはずのところが3兆5千億円かかったのだ。差し引き約3兆円は、国富の流出と言って間違いないのは確かだ。この値段なら、まじめに風力や地熱や中小水力やバイオマスに投資したほうが安上がりなのだ。

わからないのはこの3兆円よけいにかかった理由である。国富流出を問題にする人はもちろん原発再稼動も大切だろうが、早期の原発再稼動が見込めないことも視野に入れて、この3兆円よけいにかかった理由を明らかにし、予防策を考えたほうがいいのではないか。一説には緊急に購入する必要があったので足元をみられたということらしいが、それだったら緊急でなければ発生しないはずだから今年からは通常のコスト1兆円ですむだろう。

そうでない理由があるならそれは早めにチェックして直すべきだろう。電力会社はコストを気にせず調達するからそういうことになるという声もある。だったら国富の流出の真犯人は脱原発派ではなく電力会社自身だ。大阪市との交渉でも関西電力はエネルギー調達コストを明らかにしなかった。原発が再稼動しない場合でも国富の流出は最小限にしたいものである。国富流出を心配する人は原発再稼動を唱えるだけでなく、電力会社のコスト管理のチェックも懸命にやってほしいものである。

・・・というのをアゴラに投稿したらアゴラに載っていないのにBLOGOSに掲載されている。アゴラでは不採用だったけどかわりにBROGOSに載せてくれたのかな?
http://blogos.com/article/38468/