「原発ホワイトアウト」

原発事故を題材とした本は読み飽きて、買ってもつんどくだけのものもあるのだが、これは面白かった。なにしろ題材が「今」なのである。小説の形をとっているが、そのスタートが7月の参院選だから2ヶ月もたっていない。著者は霞ヶ関に勤める現役の役人のようだし、河野太郎もここに書かれていることはほぼ真実と言っているのでここにあるとおりのことが起きているといっていいのだろう。電力マネーを巧妙な方法で配り、再稼動に結びつけようとする行為がきちっと書いてある。そして「今」を通り越して物語は新年へ。そうなると何がおきるかは想像がつくわけだが、いかにもありえそうで面白い。そういうことが起きる前提として現在すでに決まっている原発安全基準のどこが悪いかが書いてある。立地一箇所あたりの原子炉数(集中立地規制)が規制されなかったこと、コアキャッチャーや格納容器の二重化も規定されなかった。作業員の身元確認義務化もなかった。そして、福島のときにも倒れて事故の引き金になった送電鉄塔は規制庁の担当範囲外で手付かずだ。避難計画の義務化もなし。今の状態で動かすとこういうことがおきますよというシミュレーション小説なのである。しかしまあ、よくもこんなスピードで書き上げ出版したものだ。そのスピードも面白いので読むんだったらなるべく早く読んだほうが面白いと思う。

原発ホワイトアウト

原発ホワイトアウト