「沈まぬ太陽」

こちらは読んでみるまで知らなかったが御巣鷹山の事故を起こした日本航空をモデルとした小説。こちらは少なくとも御巣鷹山ボーイングは実名で登場するし、主人公も実在の人物をモデルとしているので空飛ぶタイヤとは違ってかなり現実に近いだろう。あとがきで著者も書くのには相当な勇気がいったと述べているし、当の日本航空が反発して連載した週刊新潮を飛行機から撤去したということだから小説とはいってもほぼ現実なのだろう。ネットの情報によるとそのモデルはほとんどが実在で、こんな感じ。
国民航空(国航, NAL)…日本航空日航, JAL
恩地元…小倉寛太郎
行天四郎…特定のモデルなし。噂を体現する人物らしい。
馬忠次…吉高諄(後に日航常務、空港グランドサービス社長)
権田宏一(新生労働組合委員長)…渡辺武憲(後に日航名古屋支店長、ジャルエクスプレス社長)
轟鉄也(新生労働組合副委員長)…大島利徳(ジャパン・ツアー・システム副社長)
岩合(新生労働組合の黒幕)…石川芳夫(日本航空開発社長)
岡部貨物部長…岡崎彬(日航部長、全日空第2代社長・岡崎嘉平太の子)
桧山(国航社長)…松尾静麿(日航社長、航空庁初代長官)
小暮(国航社長)…朝田静夫(日航社長、元運輸次官)
堂本信介(国航社長)…高木養根(日航社長、日航初の生え抜き社長)
国見正之(国航会長)…伊藤淳二(日航会長、元鐘紡会長)
海野昇(国航社長)…山地進(日航社長、元総務庁次官[7]、運輸官僚)
三成通男(国航副社長)…利光松男(後に日航社長、小田急電鉄創業者・利光鶴松の長男)
秋月純(国航開発会長)…萩原雄二郎(日本航空開発会長)
永尾(国航常務)…長岡聰夫(日航常務、元大蔵省印刷局長・国際金融局次長)
田丸(国航常務)…安藤光郎(日航常務)
和光(国航監査役)…服部功(日航監査役
川野(国航秘書課長)…平野聡(後に日航常務、同顧問)
利根川(首相)…中曽根康弘
竹丸(副総理)…金丸信
十時(官房長官)…後藤田正晴
道塚(運輸大臣)…三塚博
永田(元首相)…福田赳夫
龍崎一清(利根川のブレーン)…瀬島龍三
青山竹太郎(運輸族の代議士)…糸山英太郎
石黒(運輸省総務課長)…黒野匡彦(後に運輸次官、成田国際空港社長)
井之山(社進党議員)…井上一成
安西富貴(目白の女王)…佐藤昭子
不二(共産党委員長)…不破哲三共産党委員長)
自由党自由民主党
社進党…日本社会党
共産党日本共産党
鷹名(日本新聞記者)…高尾健博(日本経済新聞編集委員
小野寺(国際総合開発会長)…小佐野賢治国際興業会長)
三島(東京工商会議所会頭)…五島昇(東京商工会議所会頭、東京急行電鉄会長)
永井藤夫(レジャーランド社長)…澤田秀雄エイチ・アイ・エス会長)
新日本空輸(新日空)…全日本空輸全日空
極東国内航空…東亜国内航空
日本産業銀行…日本興業銀行
ボーイングボーイング(実名で登場)
関西紡績…鐘紡
ニューヨークのグランドホテル…エセックスハウス
おすたか会…8・12連絡会(日航機事故被災者家族の会)
実際の日本航空123便墜落事故における関係者の多くが実名で登場する。
兵庫(ナイロビ在住・獣医)…神戸俊平
ここまで実在のモデルがいるとなると相当現実に近いということだろう。それだけに残念ながらハッピーエンドというわけにはいかない。主人公は結局また僻地に追いやられるし小説の中で問題となったことは改善できずに終わるし、小説の中の悪役は現実にはその後出世しているのが多い。日本航空は結局はつぶれ稲盛さんのお世話になったわけだから結局つぶれたという意味で一種のハッピーエンドかもしれないが、当然小説はそこまでない。それにしてもこれだけの巨大企業だと悪意がなくても様々な利権が生まれ、それを知ってしまった人は本来の目的や役割を忘れて利権を守ることに汲々とする様子がよくわかる。そういう人は儲かったり権力をもったりできるだろうが果たして幸せなのか。ま、自分がこのなかに入っちゃうと細井のようになってしまうだろうからやっぱり大企業には入らなくてよかったと思う。