馬鹿かも知れないが自分の頭を使える菅政権

 菅総理浜岡原発の発電中止を中部電力に要請した。先日の大地震の余震がいまだに収まらず、静岡や長野でも大地震の刺激で震度5以上の地震がおきている状況で、だいぶ前からおきると予想されている東南海地震が起きてしまうのではないかというのは誰でも心配することである。それが起きたとき浜岡原発が無事である保証はない。もちろんこれまで地震の揺れだけで過酷事故を起こした原発はないし、福島が過酷事故になったのは津波による電源喪失であってその対策は比較的簡単だ。だから東南海地震がきても浜岡原発が無事である可能性は高いと思う。しかし今回の震災の震源は比較的遠かったので東南海地震震源域に立地する浜岡原発への影響が東日本大震災と同規模であると推定することはできないだろう。もし地震により浜岡の制御に失敗したとき、その影響は福島の比ではない。福島ではほとんど海に飛んだ放射能が浜岡の場合は首都圏に降る確率がはるかに高いし、浜岡周辺半径20kmの範囲にはトヨタ関連企業など日本の主力企業群が多い。それらが避難指示で使えなくなり復興の見通しもたたなくなったとき、日本の復興の希望もなくなるだろう。それを考えれば余震が続くこの時期に浜岡原子炉を止めておくというのは当然行われるべきことであると考える。しかしその決定は中部電力や官僚機構にはできないだろう。今回も反発する勢力は反発しているようだ。明らかな反発社説を載せている産経新聞は「立地上の特異性は以前から指摘されていた」「国と電力会社と住民は、これらを十分に理解したうえで、安全な運転について合意してきた」「これまでの合意形成の経緯をも否定するものになりかねない」と述べている。これらは福島でも行われてきたことであり、その結果が現在の福島であることを考えれば理由にならないと思うのだが、まさにこういう理由から中部電力経産省原発を止められないと思われる。浜岡原発を止められるとすれば今回のような形で政府が自分の頭で考えて決断するしかない。政府の自己否定にも見えるような今回の決断は頭が悪いかも知れないがそれでも自分の頭を使う力のある菅政権ならではだろう。政治家としての仕事をちゃんとやったわけであり高く評価すべきである。
 なお、本来ならこれは総理大臣の決断ではなく、経産省から独立した原子力の危険評価を行う技術力をもち、危険な原子炉を止める権限をもつ原子力安全規制機関が行うべき仕事である。それが無いから菅総理が決断し、法的根拠のない「要請」を行わなければならなかった。つまり実質的に日本では原発が危険である場合に原発を止める仕組みが無い。保安院がそうだという人もいるかもしれないが、保安院には危険評価の力がないことは福島の例で証明されてしまっているし、保安院経産省の部局だから中止を命令することはないだろう。実質的に評価技術力のあるそういった機関ができるまでは実際には原発が危険かどうかはわからないので本来なら現段階では全ての原発を止め、実質的に機能する危険評価の仕組みを作ってから合格した順に稼動再開するのが正しい方法だろう。原発推進派も反対派も原子力安全規制部局を経産省から独立させるべきである点では主張は一致している。原発が自分のコントロール下から離れることを嫌がる経産省と危険な原発を止められては困る電力会社が抵抗しているのだ。経産省はいい加減に自己の利益より国益を優先した行動を示してほしいものである。電力会社が営利企業でいいのか、日本はよく考えるべきである。