「原発訴訟」

原発もんじゅなどの差し止め訴訟など原発関連の訴訟に30年かかわってきた弁護士の書。裁判では理論的には勝ったと思っても敗訴する例が多いらしい。判決文にも原告敗訴であるけれどもいろいろ原発に疑問を呈している判決文も多いようだ。なにしろ痴漢事件を無罪にする勇気もない裁判所のことだから、原発差し止めなんて判決を出せるわけがない。実質勝ってもほとんど敗訴というのはそういうことだ。日本の裁判官にも自分の頭で考えることのできるひとはほとんどいないのだ。そのなかで30年も戦ってきたこの弁護士は立派。わたしより年上だが、書き口も若い。被曝による障害の裁判などでは被曝の立証が困難であり、勝った例は少ない。一方風評被害などはかえって金がでやすいようである。深刻度がぜんぜん違うのにまったくねじれた評価軸だ。しかし、脳天気にかまえて事故を起こした推進派に比べ、批判勢力は優秀なのが多いと思う。結果的にこれまでは負け続けだがそれでもこれだけ優秀な批判勢力を有している日本は逆説的ではあるがやはりいい国でもある。

原発訴訟 (岩波新書)

原発訴訟 (岩波新書)