RPSは「悪い」制度なのか

日本では2003年にRPSが導入された結果再エネの導入にブレーキがかかった。ということはRPSは「悪い」制度なのだろうか。

今では一般的にはFITは初期に向き、RPSは成熟期に向くとされているようだ。ただし、日本がRPSを採用した当時にそういう認識があったかはわからない。

RPS制度を採用した国はスイス・デンマークスウェーデン・イタリア・イギリス・オーストラリア等があるようだ。つまり、再エネ先進国デンマークはRPSなのだ。それだけ見ても必ずしもRPSという制度自体が悪いわけではないことはわかる。一方の再エネ先進国ドイツはFITを採用している。つまりどちらの制度でもうまくやっているところはうまくやっている。例えば韓国。最初FITを採用し急速に伸ばし、途中からRPSにしたようだが、RPSにしてからの伸び率は18%と日本を大きく上回る。日本と違って風力を大きく伸ばした中国はこれまではFIT、今後はRPSぽい制度を採用するようだ。アメリカはおもしろいことに州ごとに採用している制度が異なる。テキサスやカルフォルニアはRPSであるようだ。ハワイ州2045年までの再エネ100%をRPSで法制化したらしい。

FITを採用すればうまくいく、というわけでもない。例えばスペイン。FITで再エネが増えすぎて経済的負担に耐え切れず買取を中止したのでそれ以降再エネは増えなくなってしまった。逆にイタリアはRPSで順調に再エネを増やしていたのにFIPにしたとたん増えなくなってしまった。成否の鍵は制度でなく運用にあるようだ。

では日本は何を間違ったのか。下記サイトの図2に比較表がある。

atomica.jaea.go.jp

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日本のRPSとほぼ同時期に制度を導入した各国の比較。その中で2010年導入目標を見てみると・・・

日本:全電力の1.35%

イギリス:全電力の10.4%

イタリア:2006年に全電力の3.05%

スウェーデン:全電力の16.9%

ドイツ:全電力の12.5%

スペイン:全電力の29.4%(大型水力含む)

他国並みなら13.5%でもおかしくない日本の目標値はわずか1.35%。確かに日本の目標値は他国にくらべて明らかに一けた低い。つまり日本ではRPSは再エネ振興策ではなく、再エネ抑制策だったのだ。ちなみに住宅用太陽光発電システムの補助金打ち切りも2005年に行われている。再エネ抑制がこのころの日本政府の意思としてあったことは間違いないのではないか。RPSはその手段として適切だったのだ。

結果的に2000年頃世界のトップ水準だった再エネ産業は衰退。日本は再エネ産業だけでなく半導体原子力も衰退している。日本政府や経済産業省は何を目指して政策を行っているのだろうか。