2005年頃の再エネ抑制の原因は何か

2000年頃急激に伸びていた日本の風力・太陽光は2005年から低迷する。その原因は何だろうか。

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日本の再エネ内訳(2000-2020)

環境アセスメントかと思ったが、風力への適用は2012年のようなので、FIT後の風力のさらなる低迷は環境アセスメントが原因と思われるが、2005年頃の低迷には関係ない。

2003年にRPS法が施行されている。RPS法とは「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」という、電力会社に一定以上の再エネの購入を義務付けるものであり、基本的に再エネ支援の法律だ。それが再エネ低迷の原因になるのだろうか。

RPS法の問題点みたいなものをネットで調べると以下のような問題や批判があるようだ。

・利用目標が小さく抑制される「政治リスク」が大きい、
・義務対象者は導入目標量を達成すると、再生可能エネルギー設備の新規設置インセンティブを失うため、制度それ自体が再生可能エネルギー発電の普及を規制してしまう。
・導入目標量自体が低すぎ、結果として導入を妨げる要因になっている
・費用負担のあり方で電気事業者の反発を受け、義務量拡大を困難にしている
・目標期間の短さのために、自然エネルギー事業にリスクを増している
・電力会社が系統の制約を口実に次々に風力発電の導入制約を公表
・電力会社による系統制約と抽選、蓄電池と解列は、風力市場を著しく萎縮させている。
自然エネルギーの普及よりも、市場原理による価格低下を重視して制度設計されている。
自然エネルギーに対して厳しい市場競争を課すことを重視した制度設計
・一般に小規模の事業者や地域参加型の市民出資事業に厳しい制度設計がなされるために、地域自立や市民参加を促すことができない
・買い手の 99%以上を 10 社しかない一般電気事業者が占めているために、現実には「市場の流動性」は全くなく、市場が出現さえしていない。
自然エネルギーではない廃棄物発電が対象に含まれていて枠の多くを占めてしまうために、本来のねらいである新規の自然エネルギーの普及拡大をむしろ鈍化させている。

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これを見ると、電力会社は政治力で義務量を低くできるし、その義務量のかなりの部分、廃棄物発電でまかなえるし、義務量を達成してしまえば系統制約等を理由にしてそれ以上の再エネは断れることになる。一方、再エネ事業者は事業のリスクが増し委縮する。ということは投資も減り技術開発も進まなかったことだろう。事実上の再エネ抑制策として機能したらしいことがわかる。

こうして、それまで年率30%増の太陽光、年率100%増の風力は2005年以降、年率10%増に抑え込まれ、技術開発やコストダウンが進まず中国に負けて弱小になり、風力は撤退してしまった。RPS法自体はそれを意図したものではないと思うが、実際の運用は再エネを抑え込むものだった。日本の再エネを弱くしたのはRPS法と言えるだろう。

実はこの文章を書くためにネットで「再エネの歴史」みたいな検索をしたのだが、なぜかRPS法があまりでてこないのだ。例えばその検索をかけて真っ先にでてくるエネ庁のページ、

www.enecho.meti.go.jp

なぜか2000年台の記述がほぼなく、ニューサンシャインのあとFITの説明になっていてRPSが見当たらない。ほかのサイトもこのページを参考にしたのが多いのか、RPSは「RPS法」とか検索しないとなかなか出てこない。RPSは失敗だったとエネ庁も思っているのではないだろうか。