「偽りのホワイトハウス」

ブッシュ政権で報道官だった人が書いた回顧録。報道官といえどもなかなか政権内の情報は見えてこないらしく苦労している。この人が見るイラク開戦の動機は、ブッシュは中東和平の手段として武力を使った強制的なイラン、イラク民主化を構想していた。しかしこれはアメリカにとって理由のない戦争であり、世論を説得するのは難しかった。そこでイラク大量破壊兵器を隠し持っているという情報をもとに戦争開戦への宣伝戦をはじめた。ブッシュの動機は上記のようなものだったが、そのとりまき(チェイニーとか)は石油利権や軍産複合体などの別な動機をもっていて彼らが一致団結して宣伝戦をやり、ついに開戦に成功した。しかし、もともと動機が不純なため開戦にともなうリスクや終戦後の工程などの検討は不十分なままだった。つまりフセイン政権が倒れた後のことはほとんど考えていなかった。それよりもだうやって開戦するかばかり考えていたようなのだ。大量破壊兵器が見つからなかったことも民族紛争による治安の悪化も根拠の薄弱な希望的な予想通りにはいかなかったというだけのことなのだ。原爆の時もそうだがアメリカ大統領というのは人々への影響の大きさを知らず安易に決断してしまうもののようである。