「津波と原発」

 ノンフィクション作家佐野眞一の本。津波直後の取材によるルポは迫真である。その取材対象の選び方がなかなか面白く、興味をそそられる。以前新宿ゴールデン街にいたおかまバーのママ(?)がその辺にいたはずだと思って散々探し回って見つけて取材したり、在野の津波研究の第一人者という元共産党の幹部に取材したり。
 ママは見つけてみるとその地域では有名なおかまで家が流されちゃったけど元気にしていた。津波研究の人は、津波がきたら人を助けることを考えずに逃げろという「津波てんでんこ」という言葉をはやらせた人だそうだが、陸前高田病院の4階に入院中で、まさか4階に津波がくるとは思わず逃げもせずに一生懸命津波を見ていたそうだ。ところが4階まで流されちゃってカーテンにつかまりなんとか命拾いをしたらしい。こんな人でも流されちゃうのだから一般人はなおさらだろう。次の日自衛隊のヘリで救出された。共産党として今までさんざん自衛隊に反対してきた人なのだが、ほんとに自衛隊はありがたかったそうだ。自衛隊からもらった毛布を肌身離さずもっていた。
 後日今度は原発の避難地域に取材にいくが、その動機が面白い。マスメディアが原発危険地帯に入らずそこらへんの情報をまったく報道しないでかわりに評論家に評論させているのがおかしいと感じるのは、まあ、われわれの感覚と同等だが、一方で(自称?)フリージャーナリストらが危険地帯にでかけていってまるで放射能を浴びる競争をしているようなYOUTUBEの動画にも辟易したというのだ。そんなんじゃなくてやはり自分の目で真実を確認したいという気になったそうだ。
 私はYOUTUBE動画をほとんど見なかったのでそういった感覚はなかった。YOUTUBEも見る習慣をつけたいものだ。しかし動画を見るのは時間がかかるのでPCをいじっているとどうしても時間のかからない文字情報に行ってしまう。動画をみるならテレビで見たいのだが、手持ちのPCにはHDMI端子がなく、手持ちのテレビにはRGB端子がなく、簡単にはつながらない。PS3とか買えばつながるだろうが、ゲームをしないのでどうももったいない。HDMI端子つきのノートPCは今や3万円台で売っているのだからそのために何か買うのだったら次のPCを買ってしまうというのもいいかもしれない。あともう少しすればスマートTVみたいなものも売り出されるだろうから、次のテレビにそれを買うのもいいだろう。結局今はPCで見るしかないが、そうすると見ないんだよなあ。
 脱線したが、本の後半は原子力の歴史と福島第一のあたりの歴史。あまり面白くなかった。東電という会社は安全文化はダメだが、別な面では非常に優秀な会社であることはよくわかる。 

津波と原発

津波と原発