海水ウランのコスト

 今日はちょっとした発見をしたので記録。とは言えわかっている人にはごくごく当たり前のことなのだが。

 再エネの余剰電力で海水ウランを精製すれば再生可能、持続可能、純国産、枯渇しないウランが手に入るが、そのコストは3万円/kg程度かかるらしい。通常のウランは5000円/kg程度らしいので6倍のコストがかかる。ウラン1kgで5万kWh程度発電するらしいから通常ウランのコストは0.1円/kWh、海水ウランのコストは0.6円/kWhということになり、0.5円/kWh程度海水ウランの方が高くなる。6倍高いと言っても0.5円/kWh程度ならたいしたことはないのではとは思うが、通常ウランの6倍かかることには変わりはなく、そこが海水ウランの弱みかなと思っていた。

 海水ウランを精製するならウランは無限に手に入るから使用済み燃料から再利用可能なウランやプルトニウムを抽出する再処理は不要になる。つまり海水ウランを使った後の廃棄物処分は直接処分ということになる。再処理をする場合と直接処分をする場合では処分コストが変わってくる。

 

再処理の経済性 (04-07-01-05) - ATOMICA -

によれば直接処分は再処理に比べ0.5~0.7円/kWh安価ということだ。つまり、海水ウランを使う場合は廃棄物処分は直接処分になるので海水ウランは通常ウランより0.5円/kWh高いが処分費用は0.5円/kWh安くなる。だから通常ウランと海水ウランのコストは実は変わらない。これが今日発見したこと。

 面白いのは同じ0.5円/kWhの違いでも海水ウランについては通常ウランの何倍にもなるから困難という記述、再処理コストについては1割程度の増加は全体コストに与える影響はさほど大きくないという記述がよく見られることだ。原子力ムラは物事を定量的に見る能力が欠けており、自分たちのやりたいことにはプラスの理由をつけ、やりたくないことにはマイナスの理由をつける能力には長けている。

 海水ウランの方が明らかに様々なメリットがあり、再処理は明らかにうまくいっていないのにどうして様々な理由をつけて再処理をやりたがるのか不明。過去の経緯がいろいろあるのだろうが、原子力ムラのなかに未来を見ている人がいない証でもあるだろう。やはり日本の原子力を考えるうえでも原子力ムラは一度なくなってもらわないとだめそうだ。