「原子力発電で私たちが知りたい120の基礎知識」

青森で試験している核燃料再処理施設で高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にする工程がうまくいかず止まっているらしい。その辺なにか本がないかと図書館で探したのだが再処理について比較的くわしく書いてある本はこれしかなかった。言わずと知れた原発反対派の書いた本であるのだが肯定派の本は技術的に知りたいことはなかなか書いていない。広瀬隆の本は三冊目であり、前に読んだ本は反対派口調が目立ちすぎたり、燃料電池の期待があからさま過ぎてまじめに読む気にならなかった。この本は基本的に技術的な解説が多く、興味をもって面白く読んだ。最後やっぱり燃料電池に超楽観的な部分があったがそれはなかったことにする。原子力の問題点がよく整理されていて説得力がある。固化体の部分についてはあまり詳しくなかったが再処理全般についても、またJCO、スリーマイル、チェルノブイリの事故についてもわかりやすい解説である。現在の風潮はCO2削減のために原子力が必要だとなっているがCO2をふやすことと放射性廃棄物をふやすこととどちらが地球にとってよりましなのかを検討した文章はみかけない。CO2は影響は全地球的であるが使用も全地球的であり、削減といってもたかがしれているし、一方で削減したくなくても燃料の枯渇がいずれやってくると考えられる。つまり影響は広範囲だが時間的には地球の歴史からみればわずかなものである。一方放射性廃棄物は影響は局地的である。使用も局地的で、削減しようと思えば使用をやめて化石燃料の手段におきかえることができるので排出の削減は100%可能である。一方時間的には半減期が長期のものは1000年とか万年とか億年とかであり時間的な影響は大きい。たとえば1000年温度管理をしなければならないときに先に化石燃料がなくなってしまったら管理できるのだろうか。一方で化石燃料がなくなってもエネルギーを生み出せる可能性があるのは高速増殖炉なのである。どちらがいいのかは私にはわからない。しかし放射性廃棄物よりCO2を出すほうがましと考える視点も必要であることは認識しておいたほうがよい。