「動力の歴史」

風力、水力、蒸気機関、ガスエンジン、ガソリンエンジンディーゼルエンジンと発達してきた動力の歴史。モーターについてはほとんど書いていない。言葉が古めかしいなと思ったら著者は1893年生まれで1980年にこの本を書いている。なんと87歳のときの著書である。もうなくなっているがそれを今回何かの記念で改めて発行したらしい。全体になかなか軽く書いてあって読みやすく面白い。日本では科学技術と一言でいうが欧米ではサイエンスとテクノロジーは別物とよく聞くが、まさに動力はテクノロジーの分野でありサイエンスはつまり科学者は初期の開発時にはほとんど無視であったようである。動力とは下々のものの仕事に役立つものであり、サイエンスをやってた貴族たちには興味のないものだったのだ。そのため初期の動力機関はサイエンスの力があればすぐに効率向上ができたであろうに効率1%とかいうレベルで何十年も進歩がなかったようである。つまりサイエンスは貴族のやるもの、テクノロジーは庶民のやるものだったわけである。日本にはサイエンスをやった貴族などいなかったわけだから科学と技術は日本人にとっては似たようなものなのだ。動力はいろいろ工夫ができるが結局は洗練されて単純になってくるというのがこの人の捕らえ方である。面白いのはロータリーエンジンを邪道と言い切っているところである。マツダロータリーエンジンを実用化してすごいというのが一般の認識であろうが、この人はいろいろ工夫したくなる気持ちはわかるが結局無駄な努力であり、手をつけないほうがよいと主張している。まあマツダもロータリーで儲けているわけでもなく、趣味といわれてもしょうがないかもしれない。